世界の自動車ブランドはToyotaが7位に
16の自動車ブランドがトップ100位以内に
IT企業が台頭するなか、Toyotaが14年連続で自動車ブランドの最高位を維持
東京モーターショーが間近に迫った今日このごろ、世界の自動車産業の関心事といえば年間の生産台数や販売台数の傾向。そしてハイブリッドやEV(電気自動車)に代表される次世代自動車の方向性が気になるが、もうひとつ重要なのが”企業や商品の価値指標”となる「ブランド」である。
”この自動車メーカーはブランド力があるから、購入したり長く愛用している”とか、”この商品とメーカーは高い技術力や信頼性に定評がある”と呼ばれる企業ほど、社歴はじめ技術開発や販売力、商品発信力などの積み重ねとなって、ブランド(銘柄・商標)の評価が高まるというもの。加えて企業の拠点である本社(創業の場所)である母国市場はじめ、海外市場を含めた企業評価も高まるものである。
その「ブランド」の具体的な指針としてインターブランド社(Intrebrand)から、グローバル企業を対象としたブランド価値評価のレポートとなる「Best Global Brands」が毎年発表されている。
世界で様々な産業や企業のブランディング
支援を行うインターブランド社は、1974年にロンドンで設立。現在、世界17ヶ国・21のオフィスを構える。日本法人である(株)インターブランドジャパン(並木将仁代表取締役社長兼CEO・東京・渋谷)では、国内はじめグローバル企業を含めたブランド戦略の立案はじめ、デザインやネーミング、企業と製品などの価値向上について支援を行っている。
レポートはグローバルの範囲で2000年より発表されているもので、今年のテーマは
「Growth in a Changing World」。数ある対象企業の財務見通しはじめ、顧客の購買意志決定に関するブランドの役割、将来の確実性を評価するブランド強度の分析を基にして、”TOP100”のランキングを公表。同時に日々変化する世界の成長に重要なキーワードとなる、”人・テクノロジー・ブランド”の3要素の分析を加えた「Best Grobal Brand 2017」レポートをこの9月に発表している。そこで数ある国内外の産業・企業から本サイトに関係のある、「国内外の自動車産業ブランド・ランキング」を紹介する(なお本稿では個々のブランドにおける”ブランド価値金額($で表示)”の表記は省略とする)。
今年のランキングは時代を反映するインターネット関連企業の、アップル(Apple)とグーグル(Google)が5年連続で第1位と第2位を占めており、以下第3位がマイクロソフト(Microsoft)(昨年第4位)となった。さらに第4位にはコカ・コーラ(Coca Cola)(昨年3位)。第5位にはインターネット通販のアマゾン(Amazon)(昨年第8位)がランクアップ。第6位には韓国の電子メーカーのサムスン(Samsung)(昨年第7位)と、時代を反映するインターネット関連企業で占められている。
そして第7位に国内外自動車メーカーでトップのトヨタ(Toyota)がランクアップ。インターネット系の躍進もあり、昨年の第5位から2ランク後退をしている。生産・販売面のみならず国内外の自動車メーカーを押さえてのトップを堅持した。そのなか昨年15位だったフェイスブック(Facebook)が第8位に躍進。第9位にはメルセデス・ベンツ(Mercedes Benz)がランクイン。そして第10位には、昨年第6位だったIBMがランクされるなど、トップ10のランクでは自動車メーカーは2ブランドのみで、IT関連躍進時代を反映している。
トップ100位に16ブランドの自動車メーカーが占める
目まぐるしく変化する世界経済と技術革新や情報変化にあって、移動手段の主流を担う自動車分野も日々変化しているのは言うまでもない。ガソリンや軽油が主流だった化石燃料時代も、今やハイブリッドや電気自動車の時代に。さらに9月に開催されたドイツのフランクフルト・モーターショーでは、電気自動車や自動運転走行をめぐる各社のプレゼンテーションが前面に。そして今月開催の東京モーターショーにおいても、この流れが引き継がれる。
ベスト10以降のランキングには、BMWが第13位(昨年は第11位)。第20位にはホンダ(Honda)(昨年第21位)がランクアップ。それに続く20位台には自動車関連はなくて、第33位に昨年と同位のフォード(Ford)が。これまた昨年と同位の第35位になったのがヒュンダイ(Hyundai)。さらに第38位に昨年と同位のアウディ(Audi)と、同じく第40位のフォルクスワーゲン(Volkswagen)となっている。海外メーカーが占める30位台にあって際立つのが日産(Nissan)。昨年の第43位から今回は第39位にランクアップ。ここ数年の電気自動車展開や三菱自動車のグループ化などが、ランクアップへとつながったと言えよう。ところが本原稿の作業中の10月初旬、同社工場における完成車の出荷前検査に不手際問題が発生。しばらくこの問題が尾を引くと同時に、来年のブランド価値評価にも影響するのは避けられないであろう。
それ以降のランクでは昨年第50位だったポルシェ(Porsche)が、第48位にアップ。
第50位から第100位までに、韓国のキア(Kia)が第69位(昨年は第69位)。さらに第73位にランドローバー(Land Rover)が第78位から躍進を。また四輪車メーカーが並ぶなか第77位には、二輪車のハーレイーダビッドソン(Harley Davidson)が(昨年は第80位)ランク。以後第100位までに、ミニ(Mini)が第87位(昨年は第88位)、フェラーリ(Ferrari)が第88位(昨年は圏外)に。そして第98位に電気自動車のテスラ(Tesla)
(昨年第100位)となっている。
国内ランクでは9社がランクイン
インターブランド社の「グローバルブランド・トップ100社」と同様の評価手法を基に、同社日本法人からこの2月に発表された
「日本のグローバルブランド・ブランド40社」(Japan’s Best Global Brans)についても紹介しておこう。
その第1位となったのは、世界ベスト100ブランドで第7位にランクされたトヨタ(昨年も第1位)がランク。引き続き第2位がホンダ(昨年第2位)。そして第4位に日産(昨年第4位)と、自動車ブランドが上位を占めている。その後は第9位にレクサス(昨年9位)と、スバルが第10位(昨年第12位)へとランクアップ。その後20位までの間にマツダが第13位(昨年第13位)と、スズキが第14位(昨年第14位)の自動車ブランドが占める。15位以降は他業種のブランドが並び、第34位に商用車メーカーのいすゞ(昨年第31位)と第40位に三菱(昨年第35位)となっている。
トップ40位の中では9つの自動車メーカーブランドが入っているが、第12位にブリヂストン(昨年第11位)と、第27位にデンソー(昨年第25位)の、タイヤと自動車部品メーカーがランクされている。
このように我が国の自動車ブランドの価値評価は昨年同様大きな変化はないものの、かつてのような世界進出を目指した時代と異なり、ネット時代の寵児となるグーグルやアマゾンなど、情報やインターネット通販に関係する分野の躍進が目立つ。
インターブランド社のグローバルトップであるCEOのジェズ・フランプトン(Jaz Frampton)氏は、「言うまでもなく今日の世界経済は、今やボーダーレスの市場。そして我々は多くの産業における情報の多様化と技術革新による刺激的な時代に生きている。その一方、競合する企業が多くになるにつれ成長の速度は鈍化となり、量的拡大から質的変化へのブランドが求められている。この”Best Global Brands”に名を連ねる世界的企業は、”ブランドが成長の礎である”ことを物語っている」と述べている。
すなわちブランドは、長年培われてきた評価価値であるとともに、日々変化するものとして、自動車産業の変化のみならず広範な業種や企業・メーカーの活動を見守っていく必要性がある。
参考:https://www.interbrandjapan.com
浜田拓郎