東京オートサロンといえばアジア最大規模であり、アメリカのSEMAショー、ドイツのエッセン・モーターショーと並ぶ世界三大カスタマイズカーショーといわれている。いまでは日本の完成車メーカーや輸入車ブランドなども広い展示ブースを構えて積極的に出展しており、一般メディアでは「海外BEV(バッテリー電気自動車)が存在感を見せる」といった、やや勘違いとも言える角度ではあるもののショーの様子を報道したり、海外からもメディアだけではなく、一般来場者を会場内では多く見かけるほど注目されている。
ショーの主役は、自慢のカスタマイズカーを出品している専門業者だが、筆者(編集K)は学校系の出展ブースをいつも楽しみにしている。公式ホームページの出展者リストで「学校」と名前がつくものを数えてみると、9つほどが東京オートサロン2025に出展していることが確認できた。
学校といっても整備士養成を主眼にした メーカー系学校と、整備士だけではなく広く自動車に関わるエンジニアの養成を行う学科なども用意するところもある自動車学校(あるいは自動車大学校)が出展していた。
そのような学校系出展者で毎回注目されているのが「NATS 日本自動車大学校」。毎回来場者をアッと言わせる車両を出展しているのだが、今回筆者が注目したのはスズキ・ジムニーのフレームをベースに、内装はスズキ・キャリイのものを採用し、日野自動車のパリ・ダカールラリー参戦トラックのレンジャーをモチーフにしたミニサイズ(軽自動車ベース)としたNATS MINI RANGERを出品していた。
また、埼玉自動車大学校はトヨタiQをベースにGRヤリスをスワップさせたヤリスJr Xを出品して注目されていた。
ドレスアップモデルだけではなく、NATSではスバル360のレストアモデルも出品されていた。会場内では年配の来場者が説明員を務める学生に熱心に質問し、学生が一生懸命説明しているといった風景にも遭遇した。
次世代の自動車業界を担う人材を育成するにしても、まったく無の状態から養成していくことが困難なのは当たり前の話。先人たちがどのようなことをしてきたのか、過去モデルへのオマージュもこめてカスタマイズしたりレストアすることで、次世代自動車へのヒントや整備技術の精進がなされるものと筆者は信じている。
アメリカンブランドではGM(ゼネラルモーターズ)やステランティス・グループ傘下のクライスラー系が、いまだに大排気量V型8気筒、しかもOHVエンジンを新車に搭載している。少し前に聞いたところでは、技術職として入社すると、まずこれらOHVエンジンの組み換えなどを研修し、アメリカ車の一丁目一番地ともいえる大排気量V8 OHVエンジンの技術承継が行われるとのことである。
会場内で慣れないスーツ姿で来場者に説明する学生の姿を見て、実際に学生と話をしてみると、まだまだ日本車の未来は明るいのではないかと、なんだか明るい気分にさせられた。