トヨタが新型アルファード/ヴェルファイアを発売した。まずは上級グレードのみが発表&発売されたため、税込み価格は540.0万〜892.0万円。月販計画台数は8500台。
従来よりワンクラス上のGAーKプラットフォーム採用車に切り替わった新型は平板になりがちなボディ側面が抑揚あるデザインに仕上がっている。これを実現するために後席用エアコンユニットの配置を変えるなど、内側にある構造物の設計が見直された。
これまでBピラーはボディ色に仕立てられていたが、今回のモデルチェンジでサイドウインドウを一体デザインに変更。その理由は「キャビンを広く、車体を長く見せるため」と開発関係者は話す。Bピラーに存在した三角部分が廃止されたことで2列目シートにおける前方向の開放感が高まったという。
一方でサイドウインドウ下端は40mmほど上がり、電動巻取り式サンシェード装着車ではウインドウ上端に設置されるために上下方向の開放感は弱まった。しかし、前出の開発関係者は「キャビンに外光がいっぱい届くノア/ヴォクシーと違い、プライバシーを保つことを優先した」とクルマのキャラクターに合わせたことを説明する。
販売構成比が5%まで下がっていたヴェルファイアは当初モデル廃止の方向で進んでいたが、ユーザーや販売店から続投を求める声が相次ぎ、社内でも 「こだわりを持ってヴェルファイアを選んでいるユーザーの気持ちを大事にする必要があるのでは?」との意見が浮上して継続が決まった。そのため、今回は単なる顔違いの兄弟車ではなく、足まわりに専用のチューニングが施されて19インチタイヤやパフォーマンス・ブレースが採用され、2.4Lターボが搭載されてアルファードとの差別化に力が注がれた。
報道発表会で執行役員のサイモン・ハンフリーズさんは、ファミリー向けミニバンから始まったアルファードが いまや政治家や芸能人にも選ばれる「おもてなし」のクルマへと育ち、じつは豊田会長も過去に移動用に用いていたことを明かした。新型のポイントとしてダイナミックな造形、もてなしを演出するコックピット、大幅に向上した乗り心地などを挙げた。さらに、同じショーファー需要に応えるクルマとして燃料電池車も用意されるクラウン・セダンの登場を予告し、年内にセンチュリーに新しいモデル(=マガジンX既報のSUV)を加えることにも言及した。
チーフエンジニアの吉岡憲一さんは先代から2代続けてアルファード/ヴェルファイアの開発を取りまとめた。「8年半前には これ以上のクルマは作れないと思ったが、いろんな声を受けて進化させた。世界の皆さんに届けていきたい」と語った。
ボディ剛性に関しては「大きな開口部を言い訳にしてきたが、オープンカーでも高い剛性を確保しているクルマはある。従来はBピラーから後ろが ねじれている感触があったので強固にしたかった」として、スライドドアレールとの両立が難しかったストレートなロッカー部(開口部下端)を生産部門との協力で実現できたことを例に挙げた。
乗り心地についても「海外の高級サルーンを研究して振動を抑えた」と説明する。例えばシートには防振のゴムブッシュと低反発パッドが用いられており、乗員に伝わる振動は従来の3分の1に低減。
いまのところグレード展開とボディカラーは絞られているが、これは長納期を避けるため。より手頃な価格のグレードも準備されていて「販売動向を見ながら(投入時期を)決めたい」と吉岡さんは話す。追加が予告されたプラグインHEVも「販売サイドの混乱を避けるため」(吉岡さん談)に ひとまず時差デビューとなったが「遠くない将来に発売する」とのこと。
また、海外から羨望の眼差しを向けられたこともあり、新型は韓国や中南米11カ国、東南アジアでの販売を予定しているという(欧州と北米での販売予定はない)。
なお、6月24&25日には東京ミッドタウン日比谷で、7月1&2日には神戸ハーバーランドumieで実車展示会が行われる予定だ。