VWのDSG17.6万台リコール
VWGJ広報部長、「申し訳ない気持ちでいっぱいです」
リコール発表前にマガジンXが本誌10月号とサイバーXで、市場措置の必要性を記事にしたフォルクスワーゲン各車に搭載されているDSG(デュアルクラッチトランスミッションオートマチックギアボックス)の不具合。8月21日には、7速DSGを搭載した対象型式17万6000台あまりについて、クラッチを油圧の力でつなぐためのオイルのケース(アッパーハウジング)に亀裂が入りオイルが漏れることで、クラッチが正常につながらないトラブルを認め、メーカー側がリコールを届出た。入庫確認の結果、対象型式である場合、ハウジングを良品と交換するとした。
9月2日、輸入元であるフォルクスワーゲングループジャパン(以下VWGJ)の広報部長と話した。記者が指摘した点は大まかに以下の4つ。
①平成20年当時に発売したクルマまでリコール対象となっている。この間、不具合報告件数は1648件にのぼっている。市場措置にここまで時間がかかったのはなぜか。
②本件、長らく市場で話題になっていた。また、有償修理ではDSGのASSY交換が必要で工賃込み30万円程度のユーザー負担が発生していた。原因が特定できた段階でなぜユーザー負担軽減策をとらなかったのか。
③過去に有償修理した方への返金はどうなるのか。
④本誌でも対象型式以外の同様のトラブルを確認している。今後、型式によって対象が広がる可能性はないのか。
VWGJの市場措置サイトに掲載されている情報のうち、DSG関連を確認した。
- 平成21年10月7日リコール 自動変速機のクラッチ温度センサーの不具合3010台。
- 平成28年11月30日サービスキャンペーン 7速DSGの油圧を蓄えるアキュームレーター容器の不具合1万4568台。
- 平成29年5月24日サービスキャンペーン 6速機械式自動変速機(DSG型ギヤボックス)の成型不良。30台。
- 平成31年4月17日サービスキャンペーン DSGのクラッチ制御プログラム不具合1148台。
DSG関連の不具合対策はほかにもあるかもしれない。ユーザーの皆さんはご自身で確認して欲しい。広報部長は、「過去に市場措置をしている」と釈明していたが、対象型式、対象台数、さらに市場措置の内容から見て、これまでとても抜本的な対策を施していたとは言えない。
くだんの広報部長は、
- 数年前に知った。過去に市場措置を複数回行っている。
- ユーザーから(不具合について)意見は寄せられていたが、個別の問題として処理してきた。ASSY交換したのは、「不具合との関係性」が把握できていなかったから。何かを処置すればほかに影響が出ないか心配された。
- 返金については(有償修理の)事実が分かるものがあれば返金する。
- まったくないとは言えない。
広報部長によると、VWGJは、ティル シェア社長以下、常にマーケットの意見に耳を傾けている。本社と支社との間で情報共有できるシステムができていると強調する。「ユーザーの皆様には不安をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいです。系列ディーラーに対しては、しっかりユーザー対応するよう指導します」と話した。VWGJは、今回のDSG不具合とその対応を教訓に毀損したプランドの回復に向けてしっかりユーザーに向き合ってもらいたいものだ。なお、トヨタ系列の旧DUO店についてもVWGJが直接フォローしており、市場措置対応についても問題なくやってくれるとのことだった。
https://www.volkswagen.co.jp/ja/afterservice/etc/recall.html
取材・文・神領 貢(マガジンX編集長)