「自賠制度を考える会」が財務・国交両大臣に要望書を提出

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「自賠制度を考える会」が財務・国交両大臣に要望書を提出

 

積立金繰り戻し実現に世論の後押し必須

業界あげて自賠責保険の必要性訴えよ!!

 

本誌が10年以上にわたって問題を提起し続けている自賠責保険積立金が一般会計に貸し出されたままの「積立金繰り戻し問題」。今年度は15年ぶりに23億円あまりが繰り戻された。それでも貸し出されたままになっている積立金残高は今年度末見込みで6159億円にのぼる。これは私たちクルマ所有者が支払った強制保険の保険料だ。

繰り戻しがなかなか実現しない事情を良く知る人たちは「被害者救済を安心して継続させていくためにも継続的な繰り戻しが必要」(福田弥夫自動車損害賠償保障制度を考える会座長・日本大学危機管理学部学部長、以下自賠制度を考える会)との考えで一致している。自賠制度を考える会は、「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に関する懇談会」のメンバーを中心に同会の呼びかけに賛意を表わす人たちで構成されている。

昨年発足した同会は、今年度予算で繰り戻し額23億円が計上されるのに大きな役割を果たした。その自賠制度を考える会は今年も来年度予算に繰り戻し金額が計上されるよう国への働きかけを強めている。9月10日には制度を所管する麻生財務、石井国交の両大臣に要望書を直接手渡した。これにさきがけ同日午後には同会主催のシンポジウムを都内で開催。当初見込みの120人に対して、主催者発表で140人が参加、自動車損害賠償保障制度の仕組みと現状、さらに被害者の生の声を聞くなどした。

シンポジウム終了後の質疑応答で、本誌記者は自賠責保険制度の重要性と問題点を広く啓蒙していかなければならないが、「どのような取組みを考えているか」質問した。が、福田座長は、「地道に伝えていかなければならない」趣旨の発言にとどまった。

長年、繰り戻し問題を取材している記者の立場で言えば、繰り戻しを軌道に乗せるには、被害者救済の重要性を強制保険に加入している一般ユーザーに知らしめ、繰り戻しが必要であることの世論形成が欠かせないと思う。そのためには呼びかけ人に参加している日本自動車連盟(JAF)、自動車メーカー、さらに同会には参加していないが、ユーザーと直接かかわる自動車販売業界、整備業界が一丸となって、この問題に対処し、告知活動、啓蒙活動を広げていくことが何よりも大切だろう。

クルマの取扱説明書や店頭のポスターなどで繰り戻しの重要性を説く。JAFなら会員証の裏に自賠責保険の重要性を記載したり、JAFメイトなどに被害者救済の実態記事を掲載するなどは当然だろう。

自賠制度のもと、重度後遺障がい者の救済実務を行っている自動車事故対策機構(濱隆司理事長、以下NASVA)も、私たちクルマ所有者が支払っている自賠責保険料が原資の自動車安全特別会計から活動費、人件費、交通事故被害者救済費を得て事業を行っているのだから、保険加入者に対してもっとあらゆる場をとらえて告知と啓蒙活動を行わなければならない。

損保ジャパン常務執行役員を退職して昨年春にNASVA理事長に就任した濱隆司理事長は当然として、自賠制度を考える会の皆さんや必要性を唱える関係者の方々はどの程度、被害者の実態を目の当たりにしているのか、また、加入者としてクルマを所有し、強制保険料支払いの痛みを実感しているのか。シンポジウムに参加していて、「何が何でも大切なお金を取り返すぞ」との熱や迫力が希薄だったと感じた。

ともあれ「借りた金は返してもらう」(自動車総連・高倉会長)」がスジ。保険料を支払う一般ユーザーと被害者の双方が納得できる取組みを続けるためにも、貸出金の全額繰り戻しを実現させなければならない。

 

取材・文・写真/神領 貢(本誌編集長)

閑話休題 「アセスメントのおかげで安全技術が進歩した」とNASVAは胸を張る。が、お金が強制保険から出ていることはあまり知られていない。本来ならユーザー団体であるJAFがJNCAPを主宰するべきではないか。ドイツやアメリカのように。

以下はシンポジウムのパネラーの発言要旨。

小林参事官
被害者団体とは常日頃から密接に連携している。内容の充実、新しいニーズはなんなのかについて、長年取り組んでいる。
地方部の空白地帯を埋めていくために予算要求していく。介護者なき後、安心して介護を受けられる、終の住処にしていただける場所を提供できるよう、予算の倍増を要求している。介護料の引き上げを要求していく。平成30年度に15年ぶりに繰戻しがふたたび始まった。31年度もこの流れを続けたい。

桑山さん
自賠責保険にはお金がある。再生医療により回復するかもしれない期待を持っている。少子高齢化により介護者が減っていくことを危惧している。

徳政さん
ナスバとの関係性が重要になってくる。国交省と被害者が直接接するのは難しい。地域のナスバとの関係性を深めるべきだと考える。

日弁連 小林さん
弁護士として関与するのは事故の最初の段階。出来るだけ多くの賠償金を得る。が、その後は関与していない。救済は十分ではない。23億円戻ってきたのが喜ばしいことではない。
ナスバの濱理事長
被害者と日々接している。医師、看護師、理学療法士が取り組んでいる。ぜひ千葉に取材に来て欲しい。
自動車会議所の秋田さん
被害者救済事業を継続するための大変重要な年。本当の大変さを健常者はどこまで分かっているのか。自動車事故対策事業は被害者救済事業と二本柱。

日大の福田さん
事故件数、死者数は減ったが、重度後遺障害者は減らない。加害者の賠償資力だけでなく、被害者救済も行う非常に優れた制度。繰戻しの拡大がいかに重要かが理解できたと思う。

JAFの矢代会長
平成30年度の繰戻しは本当に意味のあるもの。被害者の方の深刻さを改めて理解してもらえた。原理原則を踏み外さない。積立金は自動車ユーザーのお金。被害者救済のために使われなければならない。そのためには働き掛けを継続させなければならない。
自動車総連の高倉会長
自動車産業で働く者の責務として、被害者救済に寄り添っていくことは重要。自賠責保険は類を見ない世界に誇れる制度。今後も不可欠な制度。借りたものは返すのが当たり前。しっかり繰戻ししていただくのは重要。ご支援を心よりお願いします。
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