障害者の立場でJAPAN TAXIを利用した!!

スポンサーリンク

ご承知の通り東京は今、2020オンピック・パラリンピックを控えて新国立競技場の建設をはじめ、増える外国人旅行者のためのホテルの新規オープンや改修ラッシュだ。そのなか昨年の東京モーターショー直前に発表された、次世代型タクシー「トヨタJAPAN TAXI」(ジャパンタクシー)が走りはじめている。半年あまり経過した過程で全国に台数が増えつつある。筆者もすでに十数回乗車するまでになっている。

それもそのはず突然の体調故障で、2年前から身体障害者手帳を所持する身となり、現在右側の上下肢(手・脚)の不自由が続いている。現在、通院やリハビリを兼ねた外出は”車いす+介助者のサポート”を受けながら、タクシー(運賃は1割引)を利用している。

そこで障害をもつ利用者の立場で感じた印象を紹介しよう。あわせてドライバーのコメントも書き添えてみた。

 

+次世代タクシーの見本となるか、JAPAN TAXIの機能性

これまで国内タクシーの主力を担ってきたのが、トヨタ・クラウン&コンフォート。国内主要エリアはもちろんのこと、地方に至るまで絶大なシェアを誇ってきた。さらに香港はじめ、東南アジアでも広く活躍している。

トヨタ自動車とタクシー事業者の立場で共同開発をした。(社)東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長(日本交通の会長)の肝いりもあり、日ごとに台数が増えつつある。トヨタとともに開発にあたり、生産を担当するトヨタ東日本にとっても、既存の自家用車モデルのプラットフォームをいかしつつ、大きな役割を担う車種となっている。JAPAN TAXIの登場により、これまで続けてきたセダンタイプのクラウン&コンフォートの生産も1月で終了した。

ロンドンタクシーのようにルーフを高めにしたハッチバックスタイルにして、居住性とトランクの積載性(車いすとか乗降用のスロープが収容)を向上している。年々増加する家族づれやグループによる外国人旅行者への対応を想定しているのに加え、スロープを用いて車いすに乗ったまま乗降できるように、スライドドアの開口度を広げ車内スペース(車いす乗車の際は助手席シートを前方に移動)の確保にも留意しているのが特徴だ。

ボディサイズは、全長4400X全幅1695X全高1750(いずれもmm)の5ナンバーサイズ。コンフォートの4695X1695X1520(同mm)より全長で295mm短いものの、全高で230mmまさる

背高のワゴンタイプだけに、駅やホテルなどの待機状態でよく目立つ。その分東京のタクシードライバーの間でよく知られる港区・泉岳寺近くのJR線をくぐる一方通行路の低いガード(1800mm弱)などでは、行灯をつけたJAPAN TAXIは完全に通行不能となる。実はこの場所は筆者の自宅に近いこともあり、帰路のコースによっては、遠回りを余儀なくされる場合がある。タクシー代にも影響する。現在、山手線の新駅工事がはじまっており、「いずれ閉鎖されるのでは」とドライバーとも話しているところだ。

+乗降面で注文あり!

車いすごと乗車できる居住スペースを備えるJAPAN TAXI。国認定のユニバーサルデザインに適合しつつ、多様な利用者にも対応できる機能を備えているとカタログに表記されている。

ところが筆者の現状は右側半身が不自由なため、左側後部のスライドドアでの乗降ができない。車いすでの乗降は可能だが、都内の狭い一方通行路(自宅進行右側)での乗車だと、ドライバーの手間をかけられないこともあり、右側後部ドア(ドライバー後部)での乗降とならざるを得ない。

自宅前の歩道までは車いすでタクシーの右側に。そこで健常の左手でドア・サッシ(ドライバーにドアを押さえてもらう)を握りつつ、介助を受けて右脚を車外に。次に左脚て立ちあがりながら体勢を反転して、後ろ向きでシートに着座して健常の左脚を車内に。そのあと自力不能の右脚をヘルパーの介助を受けて着座姿勢となる。下車の場合は乗車時と反対の動作をする。コンフォートをはじめとするセダン・タクシーでの乗降方法はこれでいける。

一方、JAPAN TAXIの動作もほぼ同一であるものの、車高のある分ドア・サッシまでの距離も長く、かつウインドが開閉不能なため、左手で身体を固定したり、アシストバーを握るのに苦労する。せめてウインドウが可動してくれると、ハンデのある障害者にはありがたい。あるいはドアトリムのポケット部分に膨らみがあると、握りやすく、不自由な身体を固定しやすいのだが。

それとカタログにある”おもてなしの機能”ということであれば、左側のBピラーに備わる乗降用アシストグリップについて、多少形状を変えてでも右側Bピラー部分にも備えるのが利用者への気配りにもなる。

これら筆者の問いに対するトヨタの回答は、”安全面で右側後部ドアは通常使用しないので、スライドドアを装備していない”との回答だ。確かに車道側にて後方からの車両接近や事故の危険があるが、左側スライドドアにあるドアオープンランプないし反射板のような装備も求められるよう。あるいは個々のユーザーに配慮した、”サポトヨ”の充実を期待したい。

利用者用の後部座席は合成皮革の表皮。座面・背もたれともに面積が大きく、座り心地も良好。ただし頻繁に利用者が変るタクシーにおいて、経年変化等によるシートの耐久性がどうなるのか興味深い。

+ドライバーの意見は概ね良好

まだ普及台数が少ないこともあり、JAPAN TAXIにいつでも乗車できるものではないが、セダン・タクシーのトランクに車いすが収まらないケースでも、JAPAN TAXIでは折りたたんで後部のラッゲージスペースや、後部座席に積んだりしている。

利用時に運転の支障とならない範囲でドライバーのコメントを聞いているが、概ね良好な評価が返ってくる。見た目はセダンより大きく感じるものの実際ハンドルを握って走ると、1,5リッターのハイブリッドエンジン(74馬力)ながら加速感もあり、小回り性能も納得の意見が返ってくる。反面、セダンと異なるハザードスイッチやペン立てなど、ハンドル周りのスイッチ類がコンフォートなどと異なり、当初は違和感をもったドライバーの意見が多かった。

また女性ドライバーの意見で奇しくも筆者と同じコメントとなった、左側後部ドアの固定ウインドについて。季節の良いシーズンの外気取り入れや休憩時などを考慮して、開閉可能なウィンドウの希望が出ている。その分、ドア同様に、チャイルドプルーフ機能をつけるのも安全装備として必要であろう。今後都内の法人タクシーにおいて普及していくことを期待したい。

取材・文/浜田拓郎(ジャーナリスト)

トップの写真は新茶シーズを迎えて、緑にラッピングした静岡市のJAPN TAXI富士山バック(画像提供:静岡市)

乗降しているのは筆者。UDs2

IMG_1692 IMG_1676 IMG_1725

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スポンサーリンク