TOPIX
新車販売会社や整備専業者など認証工場の床下に設けられている洗車用水など産廃を含んだ水を貯める油水分離槽。比重の重い汚泥を沈殿させ、上積み水を下水に放出するのだが、この沈殿させて残った「洗車汚泥」の処分に福島県内の認証工場が頭を悩ませている。その数、認証工場数で約1700工場。
5年前の3月に発生した福島第1原発事故当時、放射性物質を含んだ汚れを洗い流すために用いられた排水から生じた「洗車汚泥」の行き場が、いま現在、見つかっておらず、油水分理槽にたまり続けた結果、容量を超えてしまい、工場の従業員らが手作業等で保管容器に移し替える事態となっているのだ。認証工場内の保管容器の置き場所にも困る事態となっており、汚泥の最終処理問題の行方と工場従業員らの健康被害への懸念が高まっているのである。
これについて、環境省指定廃棄物対策担当参事官室に聞いた。1kgあたり8000ベクレルを超える放射性物質を含んだ汚泥については、指定廃棄物として「国に処理責任がある」とした上で、「1年半前~2年前に、脱水した汚泥の処理について、地元整備業界団体と処理業者が協議するよう指示した」と説明する。ただし、当時は通常の産業廃棄物という前提で、処理スキーム(枠組み)を協議して来ており、詳細については、「正直分からない」と釈明する。通常の廃棄物なら事業者に処理の責任があるためだ。「洗車汚泥」については、産廃処理業者が引き取りを拒否するなどしたため、環境省は福島県の産廃処理業者で作る産業廃棄物協会に「根拠のない自主規制はしないで欲しいと通知した」と言う。ただし、現状では目に見える解決策は決まっていないのが実態だ。
一部で事業者らが第三者機関に依頼して調査した結果が指定廃棄物の基準を相当程度上回っていると報じられた件については、「測定方法や場所、時期などが分からない。濃淡はあるのだろう」と、正確な情報を当局として把握していないことを明かす。汚泥の汲み上げ時には、従業員に健康被害が及ばないように、労働基準監督署の指導に従いながら、対応していくとした。
汚泥の処理については、地元の整備業界3団体と産廃処理業者との間で、「処理施設設置に向けて話し合いが進んでいる」と言うが、「施設の着工は早くて年明け」と言い、さらに施設の完成はそこから数カ月後になる見通し。「情報は逐次もらっている。処理立ち上げの具体化の段階に入っている。(問題を)解きほぐせるように対応したいと話した。 これまでの汚泥の処理問題に対する当局の対応について、「個人的には後手を踏んでいたと思う」と、担当者は正直に話してくれた。ここから巻きを入れて取組んで欲しいものだ。次は業界団体をあたろう。
取材・文/神領 貢(マガジンX編集長)