【道路問題】マガジンX 2014年12月号 掲載
最近気になるのが、やたらと眩しいヘッドライト。その原因は、ハイワットのバルブに交換しているだけでなく、大きく光軸が狂っているものも見受けられる。明るいヘッドライトは、確かに夜間走行では心強いかもしれない。しかし、その明るさが他車にとって迷惑なほど眩しいとしたら…。ちょっと気になる眩しいヘッドライトの問題点について考えてみた。
夜間の安全走行のために明るいライトは有効だが…
夜間走行になくてはならないヘッドライト。暗い夜道を明るく照らしてくれ、安全走行をするうえで重要なクルマのパーツだ。
最近のクルマのヘッドライトの進化は著しく、現在ほとんどのクルマが明るい放電管タイプのHIDヘッドライトを標準装着。また、LED式を採用するクルマも増えてきた。HIDヘッドライトは、標準でも十分に明るい。そこで、ハロゲン式ヘッドライト装着のクルマにHIDシステムを後付けして、明るくしているクルマも多く見受けられる。また、標準でHIDが装着されているクルマでも、純正の明るさに満足できず、より明るいバルブに交換しているドライバーも中にはいるようだ。
夜間走行の安全性をより向上させるという意味で、より明るいヘッドライトにしたいという欲求はよくわかる。確かに、視認性がアップする明るいヘッドライトは、夜間走行の安心感や走行しやすさを格段に向上させてくれることは間違いない。ただし、それも度を過ぎると他車に迷惑をかける。
もともと、HIDヘッドライトは光源自体の光量が大きいので、ヘッドライトのレンズや反射鏡等をHID用に設計して、対向車や前走車が眩しくならないように作られている。だから、ハロゲンバルブ用に設計されたヘッドライトユニットに単純にHIDバルブを組み込むと、HIDの明るさを有効に引き出せず、眩しいけれど前方を適切に明るく照らさないヘッドライトになる可能性が高い。以前聞いた話だが、某欧州製ヘッドライトのメーカーの日本支社が流行に習い、ハロゲンバルブ用ヘッドライトをHID化するキットを試作。本社に打診したところ、一発で却下になった。HIDはレンズや反射板などユニット全体で設計するのが基本であり、バルブのみHID化するような商品は認められない、というのがその理由だったそうで、確かにその通りと製品化は諦めたという。
せっかくHIDに交換したのに、使ってみたら前方をあまり明るく照らさないと感じれば、よりハイワットのHIDバルブを装着すればもっと明るく照らしてくれるのでは、と短絡的にハイワットバルブを装着する人も出てくる。確かに多少は明るくなるだろうが、それよりも眩しさの方が増加し、より他車に迷惑をかけることになる。
だから、視認性を高めるという観点からいえば、6000Kくらいを上限に選んだほうが絶対的に前方が見やすく、走りやすいのだ。ところが、ファンション的要素でバルブを選ぶ人は、よりケルビン数の高い青白いバルブを選んでいる。8000Kや12000Kといったバルブを装着すれば、見た目にはクールな青白い光を発するようになるが、実際に視認性は高くならない。前が良く見えないので、ハイビームで走る。また光軸を高めにしているクルマもあるようだ。そんなクルマが走っていれば、対向車や前走車はとても眩しく迷惑この上ない。
対向車の場合は、一瞬すれ違うだけだが、後続車がこんなクルマだと正直走っていられない。一般道なら先に行かせればいいが、高速道路で後方にそんなクルマがいる場合は、避けようがない。自己防衛でミラー類をブルーミラーのような防眩タイプに換えておく、といった対策を施すしかないだろう。
他車の眩しいヘッドライトは、こちらが走行中になんとかできる問題ではない。しかし、他人に迷惑をかける行為なのだから、なんとかしてもらいたいものだ。
対策法はなかなか難しいのだが、まずは自分が他人に迷惑をかけるようなものを装着しないようにする。また、装着する場合は、光軸調整など他車に迷惑をかけない配慮をしっかりする。こういった基本的心がけをみんなが持つようにすれば、迷惑なクルマは少しずつ減るに違いない。そして、これができずに他人に迷惑をかけるクルマは、しっかりと取り締まってほしいと心から思うのだ。