プレリュードに乗ってわかった魅力と惜しいポイント

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24年ぶりに車名が復活した新型プレリュードは「アンリミテッド・グライド」をコンセプトに掲げ、ルックスから乗り味までグライダーを意識して開発された。2drとして設計された歴代モデルと違い、初めてハッチゲートを有する3drクーペに仕立てられた。

フロントマスクは切れ長ヘッドランプと、グライダーのウイングを連想させるボディ同色ブレードで構成されていてシンプルかつ精悍な表情を見せる。また、ドアトリムの延長線上にある左右フェンダーは盛り上がっていて運転席から視認でき、アイポイントの低さをカバーして車両感覚のつかみやすさをサポート。

リアエンドには引き締まった印象を放つ黒帯デザインのテールランプにHondaのバラ文字が配されている。夜間には真一文字の赤ラインが浮かび上がって端正かつスポーティな印象を放つ。ちなみにPreludeの車名ロゴは4代目に用いられたエンブレムをベースに、書体が見直されてリファインされたものだという。

フラッシュサーフェスを作り出して空力性能アップに貢献し、スマートさの演出にも貢献する格納式ドアハンドルがホンダeに続いて採用されているのも特徴的だ。

インパネは近年のホンダ・デザインに則した水平基調に仕上がっているが、空調ダクトはハニカム紋様のガーニッシュに埋め込まれることなく、独立して存在感を放っている点が他のホンダ車とは違う。
ブルー&ホワイトのコントラストの強い配色は他に類を見ないチャレンジで、モダンだ(一部ボディカラーにはタイトな雰囲気をもたらすブルー&ブラック内装も設定)。

パワートレインは2L直4エンジン(141ps/18.6kg-m)に2基のモーターが併設されてハイブリッド化されている。ホンダのハイブリッド機構はシリーズ式HEVのようにエンジンで発電してモーターで走行し、高速域など内燃機関で走ったほうが効率のいい領域のみエンジン直結状態に切り替わる。

それでも新型プレリュードはワインディングで運転を楽しめるクーペに仕上がっている。
これに貢献している代表的な機構がS+シフトだ。従来からのドライブモード(「コンフォート」、一般的なノーマルに相当する「GT」、「スポーツ」)を継承しつつ、もっと気持ちにシンクロする機構として開発された。
簡単に説明すると、これは仮想8速ATのようにパワートレインが制御される機構で、専用ボタンを押すことでONになる。ドライブモードに組み込まれなかったのは「別の世界観を作り出すために独立させたかったから」と開発陣は説明する。

強い加速時に有段ATを思わせるリニアシフト・コントロールは他のホンダHEVに実装済みだが、S+シフトでは減速時にも擬似シフトダウンとブリッピングが行われる。変速時にはアクティブサウンド・コントロールで強調されているエンジン音とモーターの制振制御がキレを感じさせる(「コンフォート」モードではアクティブサウンド・コントロールはOFF)。また、メーターパネルにはタコメーターと選択されている擬似ギアが表示され、しっかりとリアリティも追求。パドルを駆使して変速操作を行えるため、とくに上り坂が続くワインディングで楽しめる。


3つのドライブモードにかかわらずS+シフトはONにできるが、もっとも顕著に特徴を体感できるのはスポーツモードとの組み合わせだ。ただ、試乗を通して、キレとエンジン音についてはもう少し誇張させてもいいのではないか?と感じた。というのもタイヤからのロードノイズが大きく、せっかくのアクティブサウンド・コントロールが十分に活きていないからだ。

S+シフトがOFFの時にはパドルで減速Gを7段階に調整できる(アコードなど他のホンダHEVは6段階)。最強にすれば最大マイナス0.2Gが発生し、ほぼワンペダルで運転できるため、下り坂のワインディングではペダルを踏み替える頻度が大幅に減る。手元で減速力を調整しながら操舵に集中でき、これまた運転を楽しめる。意外なことにS+シフトONのほうが減速Gは弱くてブレーキペダルに踏み替える回数は増えたが、これは旧来の“クルマを操る価値”を残したためだとか。

減速セレクターは7段に変わり、減速Gがマイナス0.02にとどまってコースティング(滑走)に限りなく近い段階が新たに加わった。ただ、スポーツクーペに見合ったタイヤを履いているため、輸入車で標榜されているようなコースティングに期待すると、少し肩透かしを食らうかもしれない。

サスペンションはシビック・タイプRと同じく前輪がストラット式、後輪がマルチリンク式だが、ハンドリングと乗り心地をバランス良く成立させるべく、ダンパー、スタビライザー、ブッシュ類などに専用品が用いられている。ドライブモードに応じて減衰力が変わるアダプティブ・ダンパーの採用もトピックに挙げられる。
実際、タイプRよりもマイルドに仕上がっており、フラットな路面では良好な乗り心地が体感できる。なおかつワインディングでは粘りのあるハンドリングを見せ、いろんな場面で意のままの走りを味わえそうな印象を受けた。

ドライブモード切替え時やS+シフトの専用ボタンを押した際、全面デジタルメーターに大きなグラフィックが表示されるといったハデな演出はなく、前出のエンジン音も控えめ。
このように新型プレリュードは、これ見よがしな演出に頼らずオトナの雰囲気がかもし出されている。子育てを終えたポストファミリーがロングクルージングに出かけ、時には運転を存分に楽しみたい場面でも存分に応えてくれるクルマと言えよう。

主要スペック
●全長×全幅×全高:4520mm×1880mm×1355mm
●ホイールベース:2605mm
●最小回転半径:5.7m
●車両重量:1460kg
●乗車定員:4名
●パワートレイン:2L直4(141ps/18.6kg-m)&電気モーター(184ps/32.1kg-m)
●トランスミッション:電気式CVT
●WLTCモード燃費:23.6km/ L
●駆動方式:FF
●サスペンション形式:ストラット式(前)/マルチリンク式(後)
●タイヤサイズ:235/40R19
●税込み価格:617万9800円(オプションを含まない)

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