ハザードランプは違法駐車の免罪符じゃない

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【道路問題】マガジンX 2015年7月号 掲載

曲がり角や狭い場所でハザードを点けて駐車しているクルマ。確かに危険を知らせているが、まずは停めていいか考えるべき。クルマの装備や表示器は正しく使ってこそ効果があるもの。そこをもう一度しっかりと考えてクルマに乗って欲しい。

クルマの「非常点滅表示灯」、通称ハザードランプ。最近、この使い方がおかしい気がする。本来は後続車に危険を知らせるための表示灯。ところが、街の中を見ていると多くのクルマは路上に駐車するときにハザードランプを使用している。そして、これさえ点滅させておけば、どこでも駐車OKかのような風潮。まるで違法駐車の免罪符かのようだ。今回は、ハザードランプのおかしな使い方についてちょっと考えてみた。

みんながやっているからOKという考えはおかしい

 友人と交通ルールについて雑談をしているときだった。「最近のドライバーは交通マナーがなっていない。停止線手前で一時停止をするクルマもほとんどいないから危険だ」。と話すと友人は、「いや、そんなに目くじら立てることじゃない。実際にはその先で減速しているわけだし、事故になっているわけでもないんだろ。みんなが停まらないのは現状に即していないからじゃないのか。ルールだって実情に合わせて変わるべきだ」というのだ。本当にそうだろうか。みんなが守らないから、正しくないという考えはおかしいだろう。これは、裏を返せばみんながやっているからやっていい、ということにつながるのではないだろうか。雑談のときはこの話題を簡単にスルーしてしまったが、ちょっと引っかかる話題だった。

 1台のクルマがルールを守らない。それを見ていた他のクルマが、同じようにまたルールを守らない。それが繰り返され、世の中に蔓延すると、いつの間にかそのルール違反が当たり前のように行われるようになる。本来であれば、それはいけないんじゃないか、危ないんじゃないかと考えなくてはいけないところだろう。しかし、ぼんやりとなにも考えないで運転をしていると、それが違反とか危ないことと判断することなく、無意識にやってしまうのだろう。これはとてもマズイことだと思う。無意識に間違ったことを平気で繰り返していると、何かあったときにとっさに判断ができなくなり、正しいことができなくなってしまう。そして、これが事故につながりかねないのだ。

後続車に危険を知らせるハザードなのに・・

たとえば、最近気になるのはハザードランプの使用方法だ。ハザードランプの正式名称は「非常点滅表示灯」だそうだ。現在クルマに装着が義務づけられているこの装置は、その名のとおり非常時に点滅させて、後続車に危険を知らせるためのものだ。

 本来の使用方法としては、故障等でやむをえず路上に駐車をしなくてはいけない場合や、自走できずに他車に牽引してもらっているときなどに、後続や周りのドライバーに非常状態であることをランプの点滅で知らせるのが正しい。

 また、高速道路で渋滞が発生したとき、渋滞の最後尾についたクルマがハザードを点滅させて、後続車に先が渋滞であることを知らせるのに使用する場合もある。このほかにも、パーキングで駐車する際に後続車にそこに駐車する意思を伝え、一時停止してもらうためにハザードを使用しているのも見かける。




 少し前からは、道路での合流や車線変更時に、進路を譲ってくれた後続車に対してお礼代わりにハザードを1~2回点滅させるという、挨拶に使用されることが多くなってきたようだ。これは厳密にいえば、本来の装置の使用方法から考えれば間違った使用方法なのだが、コミュニケーションツールとして共通の意識を持って使用するのであれば、この使用方法は十分にありといえるだろう。

 このように、本来非常時であることを周りに知らせるためのハザードランプなのだが、最近多く目にするのが、駐車中にずっとハザードを点滅させているクルマが多くなっていることだ。本来クルマを路上に停車させるときには、方向指示器を左側に出し、路肩に寄せる。停車中も点灯させておくのであれば、方向指示器の使用が正しい。そして、再発進するときは右に方向指示器を出して、後続車に発進する意思を伝えて発進するわけだ。

 ところが、現在は止まるときにハザードを出しながら停車し、駐車中もハザードを出しっぱなしにしているクルマが本当に多い。ハザードは駐車灯ではないのに、なぜこんな風になったのだろう。これは憶測だが、ハザードを点滅させたまま停車するのを広めたのは、タクシーではないかと思う。

 タクシーは、客を乗降させるために停車するとき、後続車に停車していることを強くアピールするためにハザードを点滅させていることが多い。非常時ではないので、使用方法としては正しくはないが、客の乗降中に後続車に追突されないように停車を知らせるという意味では効果的だろう。

 これを見た一般ドライバーが、駐車中にはハザードを出すものと勘違いして使い始め、それが世の中に拡散していったのではないだろうか。そして、この間違った使い方が、段々と当たり前のように使用されるようになり、いつの間にか駐車灯代わりに使われるようになったと想像している。

 ほとんどの場合、ハザードは違法駐車と同時に使用されているケースが多い。ちょっとした乗員の乗り降り時に使用するだけならまだ黙認できるが、曲がり角や狭い場所、危険があるような場所にハザードを点滅させて駐車しているクルマはじつに多い。まるでハザードさえ点滅させていれば、ちょっとした駐車も許されるといった感じなのだ。そう、ハザードは違法駐車の免罪符として、使われているふしがあるのだ。

 しかし、繰り返すがハザードはあくまでも非常時に危険を知らせるために点滅させるのが本来の目的。ハザードを点滅させいていれば、違法駐車時に短時間ならクルマを離れても大丈夫、と思っている人は多いようだが、正直いって駐車灯として使用するのは、まったく意味がない。その間に駐車違反をとられる可能性は、ハザードを点滅させていない違法駐車車両と同じである。

 ハザードの点滅は、危険なときもある。路側帯に多くのクルマがつながって止まっていた場合、後方から見ると片側のテールランプしか見えないため、右にウインカーを出して本線に合流したいのか、ハザードを出したままかの判断がつきにくい。

 そのため、ハザードだと思って近づくと、突然そのクルマが本線に出てきて、急ブレーキを踏まざるをえないときがある。後続車に勘違いを起こさせるような状況を作り出すハザードの使用方法は、ハッキリいって危ないから止めて欲しいのだ。

 自分では良いと思って無意識に行っている行為も、じつは意味がなく、逆に危険な事態を巻き起こすかもしれないということを、少し考えてみるべきだ。クルマについている装備は、正しい使い方が決まっている。そして、多くの場合、それ以外の用途に使うことはないだろう。たとえば、方向指示器は車線変更を行うとき。ワイパーは雨が降ったとき。ヘッドライトは暗くなったとき。ブレーキは止まるときに使うのだ。こう考えれば、ハザードが駐車灯として使うものではないことはすぐにわかるだろう。

 ハザードをどう使おうとドライバーの勝手だろう、という方もいるかもしれない。しかし、クルマの正しい使い方を知ることは、安全にクルマを運転する上でとても重要なことのハズだ。そして、ちょっとしたことくらいいいじゃないか、といった安易な発想が自分勝手な運転につながり、結果として事故につながるといったらいい過ぎだろうか。

 みんながやっていることでも、もう一度そのことが本当に正しいのか自分で考えてみて、もしおかしいと思ったらやめる。みんながこうすれば、おかしなルールは徐々になくなっていくはずだ。一人一人がそういった考えを持って運転をすることで、安全な運転環境が拡大していくことを心から願うのだ。

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