ホンダが7月4日に『ホンダ・ミーティング」と称して「すべての人に“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する」のスローガンの下、同社が開発している具体的な技術をテーマごとに紹介した。
●カーボンフリー技術
地球温暖化を抑えるには化石燃料を使わないピュアEVの実用化がもっとも手っ取り早い手段ではあるが、インフラや地域、商品特性などフル電動化と親和性の低い分野もある。また、ユーザーの嗜好もあり、単一技術ですべての問題が解決できるワケではない。そこでホンダは水素やバイオフューエルを用いての課題解決も進めていく方針だ。
間近なところでは現行フィットに採用済みのi-DCDに代わってi-MMDを小型車にも展開し、その技術を活かしてプラグインHVとピュアEVも開発していく。次期フィットに用いられる2モーター式ユニットはステップワゴンなどに使われている現行品より13.2kg軽くて前後長は20mm短い。結果、競合車と同等レベルのカタログ燃費を達成できる見通しだという。
ピュアEVに関してはホンダeが欧州デビューを控えているが、将来を見据えた別のEV用アーキテクチャーを開発中。バッテリーの横幅と後輪モーターを固定要素とし、ホイールベースを伸ばすことでバッテリーの搭載量が増やせるほか、前輪用のモーターを設けて4WD化することも可能だ。なお、ホンダは日立オートモーティブと手を組んで年内にモーターの生産を始めるほか、今後スケールメリットを生かすために大型サプライヤーと組んでバッテリーなどを調達していく可能性も言及。
●交通事故ゼロ技術
日産のプロパイロット2・0同様、ホンダも高速道路で車線変更や渋滞時の追従走行を自動的に行ってくれる機能の開発を進めており、20年に実用化する。自車の周りを監視するデバイスとしてカメラのほかにレーダーとライダーを5個ずつ搭載。地図データも参考にしながら最適なライン取りが行われる。もちろんフェールセーフとして系統は2本立てになっており、故障しても制御が途切れないよう考慮。また、急病などドライバーの反応がない時に緊急停止する機能も有する。
●eMaaSとコネクテッド技術
ホンダは水素ステーションや給電器も手がけており、これらを含むエネルギーサービスとピュアEVなどの電動モビリティを融合させることも考えている。名づけて『ホンダeMaaS(エネルギー・モビリティas・aサービス)』だ。風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーは条件によって発電量が大きく変動してしまう弱点を抱えている。しかし、EVや着脱式バッテリーをストレージと捉えれば電気を貯めておくことができ、それらの位置情報や充電量をビッグデータ化すれば社会全体でエネルギーを共有できる。
コネクテッドの分野ではパーソナル・アシスタントと呼ばれる、会話形式で情報検索や各種操作を行える技術を模索中。米国のサウンドハウンド社と組んで言語理解エンジンが、中国のセンスタイム社と組んで画像認識エンジンの開発がそれぞれ進んでいる。ホンダはユーザーの嗜好や気持ちをビッグデータとして蓄積する部分を担い、AIに学習させて意図を理解させる。
こうした技術開発をスピーディに行っていくためにも「時代に合わせて組織変更を行い、将来に向けた技術研究を強化していく。スピード感も必要なので、先進技術研究所を設けて99%の失敗を許容する」(八郷隆弘・社長)として四輪R&Dセンターをオートモービルセンターに改称しつつ、デジタル技術の競争力を上げる狙いでデジタルソリューションセンターを設けるなど、4月に研究開発体制が変更された。これを受けての内部の声を本誌でもお伝えしてきたが、八郷社長は「全員がいいと思う組織はなかなかない。(本社のある東京)青山と(研究所のある)栃木は地球規模で見れば近い」として、100%納得してもらえる組織づくりの難しさを覗かせた。今後について八郷社長は「(これまで培ってきた)モノづくりは簡単に実現できるものではない。片やスピード感も必要。これらの両立が課題」として、新興企業にどうやって打ち勝っていくか?が大きなトピックであることを語った。