MIRAIで190km走ったら水素代は?

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世界初の量産燃料電池車として14年に登場したMIRAIが6年ぶりに生まれ変わった。3BOXセダンのボディ形態をそのままに、2代目は後輪駆動のシャシーを起用。燃料電池はフロントノーズに、モーターは後輪に移された。減速時のエネルギーを一時的に貯めるリチウムイオン電池は引き続きリアシート後方に搭載されている。
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初代に続いて開発を取りまとめたチーフエンジニア(以下CE)の田中義和さんは「初代のレイアウトに愛着とこだわりはあった。しかし、航続距離が短い、フロアが高くて後席の足入れスペースが狭い、プロポーションがよくないといった声が市場で聞かれた。燃料電池車というウリだけでは買ってもらえないので、これら3点の改善とともに走りを良くしたいとの理由でGA-Lプラットフォームのワイド版を用いた」と説明する。

実車を前にすると、クラウンを上回る大柄のボディはロングノーズを有し、こんもりとしたシルエットが特徴的だった初代よりも存在感が向上。ドライバーズ・サルーンらしい出で立ちに変わったことは一見しただけでわかる。
3本の水素タンクが搭載されていて最高出力182ps(先代比プラス28ps)のモーターで走り、電動系モビリティならではの滑らかな加速を見せる。停車時からの発進は穏やかで、アクセルペダルに対する反応が過敏すぎない点はポジティブに評価できる。追い越しなど中間加速ではペダルを踏み増せば車体はグイグイとスピードに乗っていく。とくにシフトレバー下方に設けられたドライブモードを「SPORT」に切り替えると加速力が強まって違いは顕著に現れる。
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当然ながら内燃機関が存在しないため、加速中や高速走行時の静粛性は高く、聞こえてくるのは風切り音のみ。20インチタイヤを履いているためロードノイズは覚悟していたものの、走行中に気になることはなかった。
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メーターパネルがインパネ中央から運転席前方に移されて中央のタッチスクリーンが12.3インチに拡大されるなど、内装もドライバー・オリエンテッドな印象が強まった。この点からも新型MIRAIがドライバーズ・サルーンを意識したクルマへと変わったことが伝わってくる。燃料電池で生成された水を任意に排出できるスイッチが特徴的だ(排水の様子はこちらから)。
欲を言うなら、音声認識システムで車載エージェントとやり取りするよりも素早く操作できる遠隔操作デバイス(例えばレクサスが採用しているリモートタッチ)は実用性アップにつながるアイテムとして欲しいところ。また、車両価格を加味すると、トランクリッドにはクローザーだけでなく電動開閉機構も欲しくなるが、一方でステアリングヒーター(一部ではなく全周に内蔵されている点が田中CEのこだわり)や外部給電アウトレットが標準化されていることを考慮すると、目標価格を実現するためにアイテムの採否で苦渋の選択を迫られたのかもしれない。
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フロントシートの骨格はクラウンから流用されているが、フロア〜ヒップポイントの距離(高さ)は30mm少ない。その影響なのか、2時間ほど座っていると底つきを感じた。
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ゴルフバッグ3個が収まるラゲッジルーム。トランクリッドにはイージークローザーも装備されている。

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補機バッテリーはラゲッジルーム右下に搭載されている。

高速道路を中心に約190km走った後、水素を充填した。その価格は2500円程度(税込み)。ハイオクガソリンの平均価格(150円/L)に消費税を加えて換算すると約15L分に相当し、ガソリン車の燃費に置き換えると12.6km/Lに。
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まだ水素ステーションは少なくて営業時間も限られているなど、燃料電池車を所有する環境は十分に整っているとは言い難い。それでも新型MIRAIは「不便さを乗り越えてでも所有したいと思わせるクルマにしたかった」という田中CEの思いが伝わってくる1台に仕上がっている。
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主要スペック(Zグレード)
●全長×全幅×全高:4975mm×1885mm×1470mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:1930㎏
●最小回転半径:5.8m
●パワートレイン:電気モーター(182ps/30.6kg-m)
●駆動方式:後輪駆動
●WLTCモード燃費:135km/kg
●税込み価格:790.0万円(オプションを含まず)

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