東京2020を控えて新たな銀座の顔を目指す「GINZA SIX」がオープン
*国際性を意識した、多彩な専門店が勢揃い
2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで3年。競技に関係する新国立競技場の建設はじめ、東京都内ではホテルや商業施設のオープンが続く。そのなか都内繁華街を代表する銀座に、新たな商業施設となる「GINZA SIX(以下GSIX:ジーシックス)」(中央区銀座六丁目10番1号地)が4月20日にオープンしている。すでに多くのメディアで紹介され、多くの来場者で賑わう。そもそもこの場所、再開発前は百貨店の松坂屋銀座店があったところ。銀座といえば多くの老舗専門店をはじめ、三越や松屋などの繁華街。近隣有楽町エリアには電鉄系の阪急、西武デパートなどが構えていたが、消費の変化もあって相次いで撤退。そのなか松坂屋(経営母体は大丸との共同経営体となるJフロントリテイリング)も新たな方向性が求められていた。今回不動産大手の森ビルなどからなる共同開発企業体によって、「GSIX」のオープンとなった。
GSIXは広い間口と奥行きとなる”一丁目分”を占める大型店を誇る。同規模の間口となるのが銀座三丁目の松屋銀座店と、一年前にオープンした銀座五丁目の東急プラザ銀座がある。中央通りに面したGSIXの南北方向の間口は約115m。一方奥行きとなる東西方向は約83m(北側部分)。これを実現したのが西側部分の松坂屋跡地と、東側部分の駐車場ビル跡地の2つの街区を合体。銀座エリアで屈指の敷地面積となる約9,080平方メートルの広さを実現。敷地一杯に地上13階、地下6階により、延床面積を約148,700平方メートルの複合施設を実現している。
建屋内は増大する外国人旅行者やトレンドに敏感な買い物客のために、多くのブランドショップや選択自在のレストランなどが揃う。そのなか異彩の施設として地下6階に、文化施設となる観世流の能楽堂が備わる。他方、建屋東側1階部分には外国人客とか団体客用に、コンビニを兼ねた観光案内所と観光バス用の乗降所が設けられた。地上階の7階から12階までと13階の一部には、賃貸オフィスフロアを用意。場所柄賃料は安価ではないようだが、”GINZA発信型”を目指す情報系やファッション関係などの入居を期待している。さらに安全・安心・快適な商業施設を目指す意味から地下部分に地域冷暖房施設を。災害時に備えた備蓄倉庫や帰宅困難者一時受入れ機能も備える。14階部分となる屋上には”江戸の庭園文化”をコンセプトにした屋上庭園を確保。ビルが林立するなか、一服のオアシスになっている。
*新たな銀座の商業価値の構築を目指す
東京2020とそれ以降の銀座エリアにおける新たな価値施設となるべく、GSIXの内外観は国内外の著名な建築家やデザイナーの手による、表現やデザインが展開。さすが日本一の地価を誇るエリアにて、建物外観は周囲の店舗ビルと同じ高さ(5、6階程度)をイメージした表現に。上層階となる13階までは、一般的なオフィスビルと同様な全面ガラス張りとしている。通常商業施設といえば1階が正面出入り口とファッション関係がメインとなるが、GSIXでは中央通り側に売り場があるもの、主力は2階以上となっている。それが建屋中央部を南北に通る”あずま通り”(南側から北方向への一方通行)の変更だ。建屋の一体化により、従来の道路が半地下型(大型車不可)と車歩道が分離に。あわせて地下駐車場への入口を設けている。その分、建屋東側を走る三原通り(北側から南方向への一方通行)の道路幅を拡げ、大型バスも駐車可能の乗降所を設けている。建屋内のあずま通りの通過。すでにその先例は近隣の三越銀座店にあり、本館と別館の一体化例(道路がある1階以外の地階と2階以上の一体化)があり、小泉政権時代の1989年(平成元年)による規制緩和策により実現。その他では森ビルが手がけた虎ノ門ヒルズ(東京・港区)の例にもあるように、建物地下を都道環状2号線(新虎通り)が通る。
*世界の一流が揃う241店
GSIXを構成する店舗・飲食施設は、銀座エリアで最大規模となる”241施設”。銀座通りに面した入り口を入るとすぐにエスカレーターがあり、2階部分の店舗エリアに。1階にも一部売り場はあるもの、あずま通りの半地下化に伴う東西建屋の一体化で、段差のない2階からの売り場としている。個々の店舗の紹介は他のメディアに委ねるとして、そのいくつかをピックアップ。
まず6階に構える「銀座・蔦屋書店」。言わずと知れた”ライフスタイルを提案する書店”としてアートやデザイン関係の書籍に力を入れている。6万冊の書籍・雑誌を揃え、もちろん自動車関連の書籍も整う。興味深いのは外国人旅行者に人気の浮世絵関係の書物を揃えたこと。また隣接するラウンジスタイルの「スターバックス・コーヒー」(6階)では、1階、2階の3ヶ所ごとに異なる店舗デザインとサービスを。メニューやマグカップ、食器などを分けて、お客は好みのメニューと店舗スタイルを選べる展開で、オアシス的な存在となっている。
GSIXにとって欠かせないのが食の世界。中心フロアとなる6階の代表格となるのが、代表和食7分野をカバーする「銀座大食堂」(386席)。店内はカウンターからボックス席を自由に選べるフードコートスタイルながら、配膳はフルサービス型。周辺のオフィスワーカーから外国人旅行者など受け入れる。そして13階の最上階にはプレミアム感のある多目的施設となる「ザ・グラン銀座」が備わる。約500坪の広さにレストランはじめ、ウエディングもできる多目的ホール。ラウンジやバーなど、会合や宴席用の施設7アイテムが整う。運営するバリューマネジメント(本社:大阪市)では近畿圏を中心に、文化・歴史面で由緒ある施設や民家などを、人が集う場所や宿泊施設として活用を図る仕組みを展開している。
*銀座のクルマの流れ
さてGSIXを訪れる買い物・食事を楽しむうえで欠かせないのが、駐車場利用と周辺の道路状況。広くて余裕がある郊外のショッピングセンターと異なり、多数の建物が林立し複雑に入り組む一方通行路の銀座にて、走り方を紹介しておこう。GSIXが備える駐車場は地下3階から地下6階部分に。収容可能な台数は、自走式が22台。機械式が423台。それに対してスタッフが対応するバレー式が10台(事前予約要)からなる。自走式やバレー式は台数に限りがあり、実質一般車輌は機械式の利用となる。加えてオープン直後もあり、週末や祝日の利用は早めの時間帯の利用が好ましい。買い物や食事の利用額に伴い駐車料金が割引となるのは、他の商業施設と同様。因みに駐車場の管理はタイムズ24となっている。
そのなか興味深い設備が建屋東側の三原通りに用意された”バス乗降所”。ところで爆買いの新聞記事でも話題になった、”銀座通りを占領する観光バスの列”は有名だ。このような現象もあり、バス乗降所の設置は歓迎される。利用には事前の予約が必要だが、少しでも中央通りにおけるバス駐車や乗降を解消へと向うことを期待したい。
他方マイカーでの利用は、あずま通りから駐車場に入庫することに。出庫はGSIX東側の三原通りに出ることに。地元ドライバーであれば銀座の道路事情は明るいが、何せ銀座の中央部で交差する「中央通り」と「晴海通り」をはじめとして、周辺部は碁盤の目の”一方通行路”の世界。中央通りの”歩行者天国”(休日の午後)も気にしながら裏通りの車歩道の区別なしにて、昼夜を問わず歩行者や駐車車輌に注意が求められている。
浜田拓郎