クルマのサブスクとして19年7月にスタートしたKINTOは、これまでに累計12万5000件の申し込みを獲得してきた。とくに23年はアルファード/ヴェルファイアなど新型車の投入が多かったため、伸び率が大きかった。全体を見ると20〜30代が40%以上を占めていて若いユーザー層に注目されているという。
同社の小寺信也 社長は「収入が不安定な若者や、いずれクルマが不要になるのではないか?と考えている人がコロナ禍を通じて顕在化した」として、買わずにサブスクで利用する方法が徐々に支持されている旨を明かす。
また、購入後に安全デバイスなどの機能を追加できるKINTO Unlimited(アンリミテッド)は23年1月にプリウスでスタートした。こちらの利用率(実際にアップグレードした利用者)は2%だが、小寺社長は「これが多いのか少ないのか、わからない。まだ利用開始から1年たらずでクルマに対するユーザーの満足度が高い(=だから利用率が伸びていないのかもしれない)。魅力的なオプションを用意できるかどうかが利用率の上昇につながるのではないか」と分析する。本来なら生産ラインで装着が必要な機能を後づけ感なく追加できるとの理由から、クルマ好きに支持されているそうだ。
さらに利用率を上げるため、9月1日から11月30日までにプリウス、ヤリス、ヤリスクロスのKINTO専用モデルに申し込んで12月31日までに契約を済ませたユーザーにアップグレード費用を最大8万円分サポートするキャンペーンが始まった。例えば7万7000円のデジタルキーなら実質無料となり、残りの3000円分を別アイテムに充当することもできる(いずれもJCBギフトカードで還元)。
ちなみにプリウスKINTO専用モデルには安全装備がパッケージ化されたプランが複数存在し、利用者の40%は最上級プランに申し込んでいるという。逆に30%のユーザーはオプションなしの素の状態で利用している。
このほか、今年度中にコネクティッド・ドライブトレーナーのバージョンアップを行い、月に1回のペースで利用者に運転のクセをフィードバックして安全運転の励行と運転技能の向上につなげる考えだ。
今年6月からプリウスを対象に開始した「これなにガイド」は車内をスマホで写すと各種スイッチの機能説明が動画などで見られる。10月にはヤリス、12月にはヤリスクロスも対象に加わる予定だ。これはKINTOが開発したものだが、トヨタも興味を示していて他車でも対応できないか打診があったという。
今期なんとか黒字をめざし、来期からは先行投資の回収をめざす小寺社長は「我われは製造業とは違うので、利用者が増えれば収益につながる」「利用が終わって戻ってきたクルマの程度が想定以上に良いケースもあり、キレイに乗り続けた利用者に何らかの還元をできないか考えたい」と話す。