高速道路最高速度120km/h引き上げへ
来春以降、新東名皮切りに4区間で実施
外された3区間は事故率と通行量で除外
販売中のマガジンX9月号p80で、新東名高速道路の御殿場インターチェンジ(IC)と浜松いなさジャンクション(JCT)間145kmが今年度末(2020年3月末)までに片側3車線の6車線化されることを書いた。先んじて長泉沼津ICと藤枝岡部IC間の下り部分72kmと藤枝岡部ICと新静岡IC間の上り線が今月16日から片側3車線化運用された。
記者はこれを機に当該部分で最高速度120km/h規制を警察庁が認めるのではないかと考え警察庁にコメントを求めた。6月23日のことだ。すると、「7月16日をもって最高速度見直しがあるわけではない」(高速道路管理室)との消極的とも思える返事を返してきた(詳細は9月号を参照して下さい)。
ところが、このコメントを得てから1カ月後にあたる4連休前の7月22日には最高速度120km/h規制についての基準を8月中に公表する旨を記者クラブに対して発表した。添付したのがその時の資料だ。
資料では平成29年11月以降の最高速度上げ試行後でも交通事故内容に大きな変化がないことが記されていた。設計速度120km/h以上で6車線以上の高速道路区間のうち、県の公安委員会により安全が確認されたところから順次速度引き上げを実施する予定としている。
候補区間は7つあるが
資料には書かれていないが、候補となる路線が明らかにされた(延長距離は概算)。
- 東北道浦和IC~佐野SIC 50km
- 常磐道柏IC~水戸IC 78km
- 東関道千葉北IC~成田IC 27km
- 新東名御殿場IC~浜松いなさJCT 145km
この中では新東名高速道路の145km区間において、年度内の完全6車線化完成後、「近い時期に(120km/h化が)できる見込み」(同)との答だった。どうやら4候補区間のうち最初に120km/hに速度上限が引き上げられるのは新東名と決まっているようだ。
記者の質問から1カ月後にこうした発表をすることを担当者が知らないはずはない。「せっかくコメントを求めたのだから、もう少し言い方があったのではないか」と指摘したが、「間違ったことは言っていない」と担当者の物言いは頑である。記者クラブ加盟社以外には、取材依頼書をFAXしないと資料ひとつ出さない警察庁の古い体質は相変わらずだ。
外された3区間
さて、本誌9月号p80には、今から5年前の記事としてすでに最高速度上げの候補地を記事にしている。新東名を合わせて7箇所だ。警察庁が認めた4つの区間は概ね重なっていたが、関越道川越IC~前橋IC71km、東名道横浜青葉IC~秦野中井IC31km、九州道太宰府IC~久留米IC25kmについては、今回公表された候補地には含まれなかった。理由を訊ねると、通行量の多さに加えて、「事故率がほかより高いから」(同)というのだが、具体的なデータが欲しいと迫ると、「公表していない」(同)と逃げる。「国民の税金で実証実験したのだから結果を速やかに公表すべき」と話しておいた。
まぁ、いずれにしろ、ようやくというべきか、来年度前半にも新東名145km区間で最高速度120km/hが正式に規制速度として設定されることが事実上決まったわけだ。事実上というのは、建前は「事故率や渋滞率を見ながら県の公安委員会が決定する」のだが、実際には警察庁の意向通りモノは決まるからだ。
高規格道路建設費のツケ
道を真っすぐ通すためにトンネルや橋を多用した結果、単位当たり建設費はバカ高いものになってしまった。借金は我われ利用者が負担させられるのだ。ところで、最高速度上げだが、なんと「部内規則の変更で行なわれる」レベルのものだった。警察庁は相変わらず慎重過ぎるほど慎重な役所である。そりゃ記者会見のオープン化などやるはずもないな。
取材・文/神領 貢(マガジンX編集長)
資料:警察庁 ネクスコ中日本