トヨタイムズ緊急生配信
同時に記者会見も行う
2月6日、トヨタの自社メディアである「トヨタイムズ」が緊急生番組を配信した。番組自体は同日の午後15時半からだった。番組の内容である報道機関にメールで「記者会見」実施の連絡が来たのは、同日の午後1時だった。以下だ。
本日、下記の通り記者会見を実施いたしますので、ご案内申し上げます。▽日時:2月6日(金) 15:30~(1時間程度)
▽場所:トヨタ自動車 東京本社
▽登壇者:トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 佐藤 恒治 他
▽司 会:トヨタイムズキャスター 富川悠太
▽内 容:ご説明、質疑応答
記者イベントの案内と同時にトヨタイムズの生配信も行われるとメールがほぼ同時に届いた。さらに役員人事の発表メールが14時に届いて、会見の内容が分かった。
さて下記は会見の要旨を聞き書きでまとめたものだ。参考になれば幸いである。
閑話休題。
MCを務めた富川氏はトヨタの社員でありながらジャーナリストを名乗っているようだ。これでジャーナリストに一番求められる客観性を担保できるのだろうかという疑問は、記者の間で一貫して語られている。
富川氏の冒頭の挨拶でも、このイベントは「トヨタイムズ生配信の番組」として説明された。トヨタイムズの視聴者に向かっての番組であることを強く意識していると捉えられる口上だ。
記者も舐められたものである。記者会見をトヨタイムズで同時配信するのではなく、トヨタ側と記者らのやりとりを伝えるトヨタイムズの番組という建て付けには強く違和感を感じる。
記者に対しての説明しても、世の中に正しく(トヨタの思惑通り)伝えられるか、トヨタ側が不信感を持っていることを強く示唆しているのではないか。こうした傾向は多くの企業側の発信姿勢に共通するものだが、トヨタのやり方は他の企業に比べてもさらに一歩踏み込んで、「自社メディアの番組」としての位置付けを明確にしていた。
記者のひとりとして緊張感を持って、客観と主観の発信を世の中から期待される仕事をしなければならないと自戒した。
「会見」なのか「番組」なのかは比較的和やかなムードの中で行われた。時折笑いも飛び出した。もとより社長就任会見だから、「期待を持って新社長に遇する」ことは良い。だが、日本一のメーカーの新社長に対して、記者が厳しい姿勢を持ち続けることは「ハネムーン」であっても当然だろう。何しろトヨタが置かれている経営環境は、彼らが自覚しているように極めて厳しいものだからだ。
近さんの手腕が未知数ゆえに、新社長を乗せた「トヨタ丸」の船出を記者らが「温かく見守る」まではいい。だが、港を出れば、先は荒波渦巻く外洋だ。近さんや佐藤さんが回答に詰まるような質問が記者からほとんど出なかったのは、正直残念だった。
記者はMCに質問者として当てられることはなかった。それはそれでトヨタ側の意思だから構わない。会見中、石田退三翁(三代目トヨタ社長)の名前が出てきた。苦しい時も「必要なものにはお金を使う」名伯楽として近さんが紹介していた。
彼は同時に「広聴」を大切にした人だ。これはトヨタの社風でもある。耳障りな話しもしっかり聞いて自分の糧にする。トヨタにはそうした社風を捨てないで欲しいと感じた「番組」だった。
富川 恒治さんどうぞ。
佐藤 全力で戦うためのフォーメーションチェンジだ。
産業連携を加速させていく。協調領域を増やし、産業を超えた仲間づくりを行う。役員人事案策定会議の提言を踏まえて検討していた。近さんはウーブンバイトヨタのCFO。
佐藤さんは自工会や経団連に軸足を置く。肩書よりも役割。チーム経営の新しい形を作る。自工会の会長人事は秋ごろからやっていた。葛藤している中、問いかけが効いた。
富川 社長を続けたい気持ちもあったのですね?章男さんは14年やった。
佐藤 現場にいたい葛藤はあった。三年は短いと思う。「まだ三年、もう三年」。豊田会長と一月下旬に話した。「日本を良くしたい」の思いで固まった。「先手必勝」なんです。主語は私ではなく私たち。友人から「何やったんだ?」のLINEが届いた。
富川 取締役も退任するんですね?
佐藤 全員参加の取締役会でトヨタを勝たせるつもりでやっている。トヨタのバッチがついた状態では、ある場合には邪魔になる。
近 一月中旬に聞いた。大変びっくりした。頭の中が真っ白。「そういうことか!」と思った。
富川 副社長時代は社長になると思っていたか?
近 将来についてクリアになっているかと言われればそうじゃない。会長、社長、その役員と相談する。佐藤さんが「全日本」にいく。普段はウーブンにいる。徹底した情報共有される会社。アジャイル開発には必要。トヨタと近いけど一緒じゃない。「トヨタはちょっとなぁ」と思うことがあった。トヨタは一人ひとりが使命感を持ってやっているが、過去に縛られる。
佐藤 機能軸がしっかりしている分、横向きの連携が足らない。章男さん曰く、「白い巨塔出身だからなぁ」。社長就任当初、モビリティカンパニーとして変わっていく段階。そこに認証不正が起きた。会長の「現場に行け!」のひと言が刺さった。分かっているつもりが違った。先日、開発現場に行った。目がキラキラしていた。「やりたい車を作らせたい。やれる環境を作る。自分がいるべき「場」はどこなんだと思った。
富川 近さんはどんなおじさんですか?
近 しっかり車を作ってもらう。そのために数字とお金が大事、。章男会長から石田退三さんの話を聞いた。喜一郎さんの番頭。喜一郎さんの夢のために大きな投資をした。今も変わってない。未来のために、自分以外の誰かのために努力したい。
富川 「生産性にこだわる」とは?
近 納車待ちのお客様がたくさんいる。少しでも多く早く作ることが大切。「ラリチャレ」は続けたい。収益目標はないが、環境が厳しくても何かをやめない。損益分岐台数を引き下げていくのが大切。
佐藤 稼ぐ力は大事。近さんはミニバン好き。会長と話した時に「日本の役に立ちたい」。シンプルな言葉だから刺さった。細かいことは言わない。「産業報国」。人事に会長は絡んでない。
富川 章男会長の受け止めは?
佐藤 柔軟な経営体制が求められる。章男会長の言うテーマで最も重要なのは人材育成。
質疑応答。
Q 自動運転の現在地は?
近 トヨタのSDV。章男会長からは「交通事故ゼロ」。確実に前進している。他社から学ぶべきこともたくさんある。1.5億台の保有のデータは強み。役目はしっかり投資できる環境、いろんな道を試せる環境を作っていくのが役割。
Q 損益分岐台数改善の課題は?
近 台数が少し上がっている。どんなに環境が厳しくてもしっかり踏ん張れるのかの課題認識がある。「機能」に振っていたことには皆が気づいている。しっかりやっていきたい。
Q 3年間でできたこと、引き継いで欲しいことは?
佐藤 個人でやるべきことはない。主語は「私」ではなく「私たち」」。3年で行動することの「具体」が見えてきた。モビリティカンパニーへ向けての初動トルクは出ている。「もっといいクルマをつくろうよ」を全社で追求して欲しい。10年先もお客様に選んでいただけるクルマのタネを植えること。今さんは分かっていることですが。
Q 重視したいポイントは?
近 チーム経営は変わらない。「もっといいクルマを作る」も変わらない。ぶらさずやっていきたい。
Q 会見した理由は?
佐藤 適宜開示が必要。記者の関心に応えるため。
Q 章男会長の「人材育成」が言われた。「トヨタらしさ」とは?
佐藤 正確をばしっと言えるわけではない。トヨタ綱領には「産業報国の実をあげる」。一生懸命やっていると視野が狭くなる。
近 創業当時の思いを実践できること。「場」と章男会長が言う。「現場」「売り場」が必ずある。「場」ではないところで決めず行動することがトヨタらしい。
Q 近さんの役割に変化はあるのか?
今 織機のTOBについては、トヨタ自動車の意思決定に参加していない。豊田不動産の取締役として買い付けにあたっていく。
Q トヨタは稼ぐことによりフォーカスするのか?
近 未来に投資される。温かみのあるやり方をする。
佐藤 ますます「ファン ツー ドライブ」のフォーカスは上がる。近さんが社長になることで経理や人事もクルマ作りに向いてくれるはず。
Q 経団連副会長として取り組むべきは?
佐藤 「新7つの課題」についての危機感は完全に一致している。委員会任せではなく業界トップが絵を描く仕事をやる。
Q 「社内抗争勃発」のレフェリー役はどうするの?
佐藤 近さんやってくださいね。
Q セリカはどうなりますか?
近 「私をスキーに連れてって」世代。
佐藤 いいクルマは情熱の火が消えない限りつくれますよ!今のトヨタのリアルな空気感をお伝えできればいい。これからのトヨタにご期待ください。
近 評価いただけるように頑張っていきたい。
取材・文・写真/神領 貢(マガジンX編集長)










