スズキがクーペSUVのフロンクスを国内発表&発売した。税込み価格は2WDモデルが254万1000円、4WDモデルが273万9000円。月販目標台数は1000台。
フロンクスはインドで生産されており、すでに中南米や中近東、アフリカなど70カ国で販売されている。日本導入にあたっては専用の作り込み(後述)が随所に行われたという。「インドのSUV市場で累計販売20万台を最速で突破した」と語る鈴木俊宏社長は「本来もっと早く達成できたが、他国への輸出もあって(現地での)販売スピードを落とした」と発表会の席上で語った。
3995mm×1765mm×1550mmに仕上がっているボディには街中で埋没しないデザインが与えられている。具体的には左右ヘッドランプを結ぶメッキガーニッシュやダブルフェンダー、インパクトを放つ横一文字テールランプなど。また、スズキ初のシャークフィンアンテナが採用されていて立体駐車場に入庫できる高さと、4.8mの最小回転半径も見逃せない。
インテリアはブラック&ボルドーのチャレンジングな配色に仕上がっている。日本専用にシート表皮の一部に合皮が用いられ、それに伴ってボルドーの配色も変わっている。海外ではボルスター(サイドサポート部)にボルドーが配されているが、日本仕様ではクッション前端とシートバック上半分をボルドーに着色。ドアトリムにおいては海外仕様のほうがボルドーの面積が広く、日本仕様は合皮部分だけに抑えられている。
インパネ中段とドアハンドル周囲のパールブラック塗装も日本向けオリジナルで、海外仕様はマットシルバーに仕上がっているという。
装備アイテムにおいてもスマホ連携ナビ、電動パーキングブレーキ(ホールド機能付き)、前席シートヒーター、後席の足元ヒーダーダクト、フラットな床面を作り出すラゲッジボードが日本向け専用に採用されている。
パワートレインは1.5L直4(101ps/13.8kg-m)に3.1ps/6.1kg-mの小容量モーターが組み合わされたマイルド・ハイブリッドで、WLTCモード燃費は19.0km/Lをマークしている。6速ATはパドルシフトでも操作可能だ。
また、かつて輸入販売されたバレーノの反省を生かし、フロンクスには日本専用の4WDモデルがラインナップされている。こちらには急な下り坂でも車速が一定に保持されるヒルディセント・コントロールやスノーモード、グリップ・コントロールを採用。
日本専用の作り込みは他にもある。タイヤ、サスペンション(スプリング&ダンパー)、電動パワステは日本の路面に合わせてチューニングされており、高剛性&高強度ハブの採用に伴って日本仕様のみホイールが5本ボルト留めに設計されている(海外仕様は4本留め)。静粛性、乗り心地、直進安定性などを重視した結果だというから、ぜひ試乗で確かめたいところだ。
フロンクスは早くからティーザー活動が行われ、SNSなどのデジタルツールや537カ所にも及ぶ先行展示会で発売が予告されてきた。鈴木社長は今回の活動を通して「もっと消費者にスズキのこと、商品のことを知ってもらう活動が必要と感じた」と振り返る。
ティーザー活動の成果は大きく、すでに9000台の受注を獲得しているというが、一方で「インド市場も伸びていて生産するのが精一杯。品質とボリュームの確保を考える必要がある」として簡単に輸入台数を増やせない主旨を語った。
生産国について質問された鈴木社長は「どこで作ってもスズキの品質を確保する」と自信を覗かせる。また、バレーノが国内で苦戦したのは「ドアを開けた時のニオイ、電動格納式ドアミラーがないなど、市場の要求とズレがあった。インド産ということで販売店も慎重になりすぎた。今回は日本市場のニーズに合わせて仕様を作り込んだ」と語った。
チーフエンジニアの森田祐司さんによると、国内導入は開発が始まった後に決まったそうで「会社として導入に踏み切れずにいたが、日本仕様も作れるように最初から意識していた」と明かす。装備内容に対して割安感があるのは「現地の部品が安いからではなく、量産効果が出ているから。平均すると月間2万台程度を生産している」という。また「日本仕様のために開発した部品を今後は他の仕向け地モデルに横展開することも可能だ」と話す。
ちなみにプラットフォームやインパネ、シートなど、多くの部品は最新型のバレーノと共有されている。
(編集部注:各位の発言は趣旨が変わらない範囲で編集&構成しました)