マガジンX9月号p70-71で掲載した「事故率の低さで説明できない大口割引」の記事。本文中では金融庁保健課のコメント全部を掲載できなかったので、ここにコメントの全文を掲載します。ご参考に。
ご質問いただきました件について、以下のとおりご回答いたします。よろしくお願いいたします。
(質問)
損保に取材すると前年の事故率に応じて保険料を算定し、乗合各社と団体の担当者が交渉の上、次年度の保険料を横並びで決める。団体側から「横並び」を求められるので談合ではないと思いますが、本当に損保間で協議をしていないのか。
(回答)
ご質問の内容から団体扱の自動車保険に係るご質問かと思いますので、その理解でお答えしますと、5月14日の閣議後大臣記者会見のとおり、現在、実態把握を進めているところです。当庁HPをご確認いただければと思います。
https://www.fsa.go.jp/common/conference/minister/2024a/20240514-1.html
(質問)
最低単位10台以上から5%の割引を受けられる「団体割引」。また、等級制度がないことも一般加入者より優遇されていると思います。
振込や募集の手間がない分、他の保険同様5%程度の割引は容認できますが、等級制度の考え方なしに保険料を決めるのは違和感があります。ある損保では一般より「割引後は5%程度損害率が高い。その分事務経費で相殺している」と言いますが、事務経費で「相殺できるのは2%程度」との証言もあります。
もう一点気になるのは、保険料値上げの波が訪れる中、大口、団体に加入している人を一般と同じプールに入れれば保険料が全体に下がるのではないかとの可能性です。
一般加入者は自動車保険を何度も使う「不良加入者」の面倒も見ています。「同じ等級でも保険を使ったら3年間、「保険料が上がる制度以降は儲かるようになった」証言もありますが、これも団体加入者には適用されていません。
自賠責保険には「団体」の制度はありません。相互扶助」の考え方からすれば、団体割引は事務手数料分の割引にとどめるよう見直すべきと考えます。当局のお考えをお聞かせ願えませんか。よろしくお願い申し上げます。
(回答)
「最低単位10台以上から割引を受けられる」、「等級制度がない」とのことですので、団体扱いの自動車保険ではなく、「フリート契約」に係るご質問かと思います。
個別の保険会社の保険料についてのコメントは差し控えさせて頂きますが、一般的に、フリート契約は、前年の保険成績に基づき保険料の割増引が行われるものと承知しております。
この場合、契約者毎のリスクを適切に反映する必要があり、この点において、事故件数に応じた保険料の割増引を行う等級制度と同趣旨になるものと認識しております。従いまして、割引について、事務手数料分の割引のみに止めることは、リスクを適切に反映しないことになり、公平性や合理性の観点から適当ではないと考えます。
なお、「団体扱契約」の場合であっても、一般的には、保険成績の信頼度が高い一定規模以上の台数を持つ企業等の団体ごとの保険成績・台数規模に応じて割引率が設定されていると承知しており、団体ごとのリスクを適切に反映する必要がありますので、同様であると考えます。
取材・文・写真/神領 貢(マガジンX編集長)