日野とふそう提携実現の深読み「提携を持ちかけたのはどっちか?」

スポンサーリンク

日野とふそう提携実現の深読み

 

日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが持ち株会社のもと統合することを発表したのは5月30日のことだ。本件、記者もさすがに事前の情報を得ることができなかった。これは一般社員も同じだったようだ。中の事情に詳しい人の話を聞こう。以下だ。
日野とふそうの協業に影響がでないようにするため、ダイムラーもトヨタも双方とも持分法適用会社にとどめるということです。下さん(下義生前社長)が社長時代の2020年に電動化に関するトレイトン(旧フォルクスワーゲン トラック&バス)との技術提携が行われました。が、さらにトレイトンの核心技術を供与してもらうには、「トレイトンの完全子会社になるのが条件」と言われて、今春、提携解消になったと聞いています。他の提携先を探すきっかけになったのはそれが起点だと思います。
トレイトンの申し入れは「スカニアとトレイトンの関係」をみると、「たしかにそうだろうな」と推測できる話です。当時、日野がトヨタの完全子会社でありながら、トレイトンとの提携発表の場にトヨタがいないことに違和感を持っていました。
まずは法規対応から
一部報道では「日野とふそうでプラットフォームの共通化がしたいはず」との指摘がありました。それもおそらく目的のひとつですが、実際にはまだ何も議論されていません。むしろ提携の動機付けになったのは目先の法規制に対応できるユニットの共通化です。日野の弱点であるエンジンやマフラー(排ガスまわり)であって、プラットフォームは生産工場再編の後からついてくるイメージです。不正以降、9Lエンジンは復活しましたが13Lはまだ出せない状態です。不正内容も9Lと13Lで異なります。

提携が決まったのは今年の2月頃でした。提携内容に関する詳細がまとまってから公表する選択肢もありましたが、日野自動車の窮状を考えると、「トヨタの株主総会前のタイミングがベスト」との判断になったと思います。発表会見で「詳細は決まっていない」と、登壇者が歯切れの悪い回答しかできなかったのはそのためです。

明言はしませんでしたが、日野自動車のマイルストーンを描けないでいた小木曽社長とトヨタ側がダイムラーに話を持ちかけたと聞いています。

4社会見でトヨタの佐藤社長が、「「トヨタから日野へなかなか技術的な恩恵を与えることができなかった」趣旨の発言をされたのが印象的でした。日野を子会社にしたけど、結局のところ双方にメリットがなかったと失敗を認めたように受け止めました。
「トヨタ側が提携を持ちかけた」というのはあくまでも推測です。信じないでください(笑)。

液体と気体

逆の視点で、「なぜダイムラーは提携話に乗ったか」です。これは「水素」が鍵でしょう。ダイムラーのCEOが、「水素では大型のBEVは無理だ」と話していました。実際にダイムラーは水素をやっています。ただしこれをそのまま日本に出すのは厳しい状況です。彼らはトヨタの「気体」に対して液体水素を研究しているからです。ダイムラーは液体水素を世界に出したいと考えるでしょう。仮に日本では、ふそうだけが「液体水素」だとなったときに、ふそうのためだけに充填インフラが整備されるとは到底考えられません。トヨタを巻き込んで日本政府に液体水素のインフラ整備をさせたいのでしょうね。

もうひとつはふそうの開発拠点の問題です。提携実現後は、日本での開発をやめてインドに研究拠点を持って行くという話です。川崎にある今のふそうの開発現場にもインド出身の方が多くいます。拠点移転に備えて「人材を育てている」と話す人もいます。

言い方は悪いのですが、「日本固有のガラパゴス商品(バスや4軸低床のトラック)は日野にやらせればいい」との考えなのかも知れませんね。このシナリオだとふそう側にも提携のメリットありとなります。ダイムラーから見た日野は日本事業の設計委託会社という位置付けでしょぅか。

まとめ/神領 貢(マガジンX編集長)1 2

 

スポンサーリンク