MX-30はマツダが新たに投入した新ブランドのコンパクトSUVだ。エントリー価格は242.0万円で、国内では月販1000台が目標に掲げられている。一見すると安そうに見えるが、じつはパッケージオプションが多く用意されており、積み上げていくと結構な価格になる。
外観はクーペSUVを思わせるフォルムに仕上がっているが、これは初めにクーペSUVありきでデザインされたワケではない。また、流麗なシルエットを強調する狙いでルーフサイドが別色に塗装されてブラックルーフが組み合わされる3トーンも新しい挑戦と言えよう。
エクステリア以上にユニークなのが内装で、使用素材にもこだわりが見られる。もっとも目を引くのはフローティング・コンソールの一部とドアグリップ裏側に用いられたコルクだ。マツダはコルク栓を製造する会社としてスタートを切り、そのヘリテージとも言える素材が使われている。コルクは木を伐採することなく表皮から繰り返し採取できるため、環境に配慮した素材でもある。もちろん、過酷な環境でもある車内への使用にあたって念入りなテストが行われて耐久性は確認済みだという。
フローティング・コンソールにはダイヤル式コマンダーとシフトレバーが配されている。新開発のシフトレバーは選択したポジションから戻らない従来方式で、逆L字型のパターンと相まって誤操作を防ぐことに配慮。また、タッチスクリーン仕立ての空調パネルでは主な機能が物理スイッチとして設けられていて素早くアクセスできる。なお、このタッチスクリーンには毎回少しずつ異なるグラフィックスが映し出されて乗員を迎える演出が内蔵されている。
国内でまず発売されたのは2LスカイアクティブG(156ps/20.3kg-m)にスターター兼ジェネレーター(6.9ps/5.0kg-m)が組み合わされたマイルド・ハイブリッド(以下Mハイブリッド)だ。Mハイブリッドはマツダ3とCX-30のスカイアクティブXで実用化済みだが、スカイアクティブGとの組み合わせは国内初。ミッションは6速ATのみで、4WDモデルもラインナップされている。
発進加速は決してパワフルとは言い難いが、速度に乗ってしまえば快適にクルーズできる。SPORTモードに切り替えるとエンジン回転数が高めに維持されて3000rpmでシフトアップするセッティングに変わるため、ワインディングなどテンポよく走りたい時にマッチするだろう。
SUVとは言いながらも全高が1550mmに抑えられていることもあってハンドリングは素直で軽快だ。また、サスペンションのストローク量は多めで、大らかな乗り味が実現されている。スターター兼ジェネレーターのおかげでアイドリング・ストップ時からの再始動もスムーズだ。
ちなみに欧州で先行して発売されたピュアEVバージョンの国内投入は21年1月に予定されている。
フリースタイルドアと称する観音開き式のサブドアを持たせるアイデアは開発が立ち上がって2年が経過した頃に持ち上がったそうだ。「新しい価値や体験を提供しつつ、デザインと乗降性を両立させようと最初の2年くらいは行ったり来たりを繰り返していた」(竹内主査)が、RX-8で実用化した過去の財産を取り入れるにあたって社内ではネガティブな声も聞かれたという。「とくに設計と生産の各部門からは、側突、乗り心地、剛性を懸念する声があった」と竹内さんは振り返る。しかし、一般的なヒンジドアではクーペ風シルエットは実現できなかったはずで、フリースタイルドアがもたらした恩恵は小さくない。
実際に開く様子を動画に収録したので、こちらからどうぞ。