東京オリパラの各競技施設を“舟運”で結ぶ拠点日の出ふ頭小型船ターミナルに「Hi-NODE(ハイノード)」がオープン
2年ぶりに開催の「東京モーターショー2019」(東京ビッグサイト)が、いよいよ2か月後に迫ってきた。そして周辺部の東京ベイエリアでは、「2020東京オリンピック・パラリンピック」の主要競技施設の工事が最終段階を迎えている。これらビッグサイトをはじめ各競技施設の多くが、東京港や運河エリアに面した“水辺”にあるのも東京大会の特徴だ。
東京都(所管は東京都港湾局)ではこの機会を捉えて各競技施設や点在する観光スポットなどを結ぶ「舟運・舟旅」を推進している。
かっては貨物船の出入港で活況を呈した東京港は、時代の変遷とともに、今やコンテナ船が主流となった。ふ頭ではたくさんのトラックが行き交っている。
現在の東京港は臨海部のコンテナふ頭(江東区・青海地区&品川区・大井ふ頭)や有明フェリーターミナルと晴海客船ターや貨物船が停泊する“竹芝桟橋・日の出ふ頭・芝浦ふ頭”(いずれも港区)で構成されている。
そのうち最も北側に位置する「竹芝桟橋」(港区海岸一丁目)は伊豆七島(東海汽船)や小笠原(小笠原海運)を結ぶ定期船の発着所として利用者の認知度も高い。
その南には港内や隅田川を巡る遊覧船や水上タクシーの発着所となる「日の出ふ頭小型船ターミナル」(同海岸二丁目)、さらに南側の「芝浦ふ頭」(同海岸三丁目)には、現在も国内航路の貨物船の停泊ふ頭として機能している。お台場地区と結ぶ“レインボーブリッジ”が頭上をつないでいる。
そのうち日の出ふ頭小型船ターミナルがこれまでの小型船発着場のみならず、より多くの人が集う交流施設となり得る多機能を備えた「Hi-NODE」(ハイノード)として、8月初旬にオープンした。
これまでの小型船ターミナルといえば、周囲の港湾地帯の風景と変わりないダーク系の施設だったと以前を知る一人として記憶している。生まれ変わったHi-NODEの外観は、日の出ふ頭に旧くから存在する、凸屋根のクラシック倉庫をイメージしたコンクリート製の2連凸屋根が特徴。しかもその前面には新たに芝生広場と多品種の木々が植栽されるなど、水辺を彩る景観となっている。
Hi-NODEが建つ日の出ふ頭などを含むこのエリア、国が推進する“東京圏の国家戦略特別区域”の特定事業に位置づけられている。
そばを通る首都高速1号線とその下の海岸通りの西側部分、さらにJR山手線や東海道新幹線の東側部分に現在建っている“東芝本社ビル”を合わせて新たな再開発を行う。
「(仮称)芝浦一丁目計画」の関連事業として、野村不動産(株)とグループ企業であるNREGと東芝不動産(株)の保有・運営による、第一弾のプロジェクトとなる。
芝浦プロジェクト本部の企画部長でプロジェクトリーダーでもある野村不動産の金井 治氏は、「本事業は東京都が推進している舟運活性化や水辺の賑わい創出を目的にした、重要な取り組みの一つと認識しています。今回の日の出ふ頭プロジェクトはじめ、隣接する竹芝桟橋や芝浦ふ頭エリアとの回遊性向上に寄与する事業として、開発を進めてまいりました。このほど無事に“Hi-NODE(ハイノード)”の開業となりましたが、引き続き“芝浦一丁目地区(浜松町ビルディング)”の開発においても同様にこの地域の発展になるべくプロジェクトを進めるとともに、誰もが楽しめる“Hi-NODE”の施設運営に努めたいと考えます」と述べる。
猛暑が続く東京にあって、レインボーブリッジや東京港から吹くさわやかな海風が、Hi-NODEならではのロケーションと雰囲気を実現している。その概要は紹介画像にもあるように、2連屋根をイメージしたシンプルな2階建ての外観。以前の硬い印象だった日の出ふ頭ターミナルを払拭する芝生広場と木々の植栽により、来場者や小型船利用者の気分をホッとさせる演出を実現している。建屋の水辺側には、新装なった2つの浮桟橋に4船発着できる機能を備える。
建屋1階の北側には待合所を設けているが、1人用のイスよりも高齢者やグループなどにも対応できる、数人掛けのベンチシートを複数用意したほうが適当だろう。同じ1階南側には、ヨーロッパ料理をメインにしたオープンキッチンスタイルの「BESIDE SEASIDE(ビサイド シーサイド)」(店内94席+テラス100席)が備わる一方、2階にはバーカウンターを設けてパーティーやイベントなどの貸切利用も可能な「BARTH ONE(バース ワン)」(店内86席+テラス32席)が構える。2つのレストランが整備されたことにより、単なる通過点の小型船ターミナル機能のみならず、食事を楽しんだり屋外に用意されたデザインソファに座りながら、行き交う遊覧船やイエローカラーの水上タクシーを待つのも一考だ。
クルマ視点で提案するならば、芝生広場やレストランなどを用いた、コンパクトな規模でのメーカーや販売店が主催する、新型車発表会や試乗会のベースとして活用できそうである。
今回のHi―NODEの開業により、従来の行政主体の水辺エリアの整備から豊富な民間アイデアと投資により、“港湾関係者に限られるふ頭や桟橋エリア“の利用から、“誰にでも安全に楽しめるウォーターフロントの憩いの場”の実現と発展に貢献するとともに、竹芝桟橋側とを結ぶ人道橋も一新されるなど、海外港湾エリアの新たな魅力づくりに寄与しそうだ。
一つの交流拠点であるHi-NODEの開業とともに、今後このエリアの中心的存在となる芝浦一丁目地区(浜松町ビルディング)、最寄り駅であるJR&東京モノレールの“浜松町駅”から“Hi-NODE”に至る歩行者動線の安全確保も、開発プロジェクトでは重要。
それは都心部と羽田空港方面を結ぶ“首都高速1号線の高架下を走る”都道・海岸通り“を、歩行者が横断する際の安全性確保だ。
実は以前この近くに住んでいた筆者の経験するすると、”都道・海岸通り“は地元の産業道路として商用車や大型トラックなどの通行が多い。信号機のある横断歩道の周囲は、日中でも高架下が薄暗い。夜間には照明が灯るものの十分な明るさが確保されていない、など課題も多い。
さらに横断歩道の至近部がカーブであることや、大型車の通行により補修が追いつかず、路面が傷んでいるので、交通事故が発生しやすい要注意スポットとなっている。
歩行者保護観点(そのなかにはHi-NODEの利用者を含む)から、横断歩道と信号機の設置場所、標識や標示などの安全レベルを向上させる必要があるだろう。警察や道路管理者などによる検討が求められよう。
点や線のみならず面を扱うデベロッパーとして、対象物件・案件のみならず、周辺領域の整備・安全対策もしてこそ、誰もが安心して楽しめるひと時を過ごせるものである。
浜田拓郎