今年1月にノア/ヴォクシー(以下、ノアと略す)が4代目へとバトンタッチを果たした。従来からミニバンや商用バンはトヨタ車体が開発業務を請け負っていたが、18年にバン事業が移管されて開発の主体はトヨタ車体に移った。この体制変更後、初めて開発されたのが新型ノアだ。
01年にFF方式のノアが誕生して以来、長らくMCプラットフォームが使われてきたが、今回、初めて(!)全面刷新されてプリウスやC-HRと同世代のGA-Cプラットフォームに切り替わった。
併せてハイブリッド機構も丸ごとリニューアルされた。2モーター式の構造は先代と同じだが、モーターの出力は16%、バッテリーの出力は15%それぞれ向上した。また、バッテリーの種類はニッケル水素からリチウムイオンに変わった。先代はEV走行領域が狭くてエンジンが始動しやすい印象だったが、新型に試乗したところ、EV走行領域が広がっていることを実感。その効果もあってカタログ燃費は23%も改善されて23.4km/ Lに向上している。
先代に試乗した際に気になった電子系の高周波音(モスキート音のようなキーンというノイズ)が払拭されて消えた(厳密に言うと、人間の耳に聞こえない音域に改善された)のも朗報だ。この音は電気系の昇圧に伴って発生するもので、制御ユニットの演算を高速化することで解消されたという。
積雪地ユーザーに朗報なのが、HEVにも4WDモデルが設定されたことだ。しかも、この4WDシステムは発進時に後輪がアシストするだけでなく、旋回時や加速時の安定感アップにも寄与するよう設計されている。現に、後輪モーターはプリウスe-Fourのものと比べて出力は6倍、トルクは1.5倍に強化されている。
新型ノアには販売価格が上昇しないよう、コストを抑えて知恵を絞ったアイデアがいくつも盛り込まれている。例えば電動モーターに頼らないサイドステップ。床下から迫り出す地上高200mmのステップには、スライドドアと連結したカラクリ機構のリンクが使われている。
電動スライドドアにはブラインドスポット警告のレーダーが活用され、オープン時に後方からクルマや自転車が接近している際に警報が鳴って自動的に停止する機能を新採用。電気式ラッチ採用のレクサスNXで実用化された機構の流用で、勢いよくドアを開けて車外に降りがちな子供達が事故に巻き込まれるのを防ぐアイテムとして有効だろう。車外からスマホで操作できるアドバンストパークの様子とともに動画に収録したので、併せてご覧ください。
大きく開くハッチゲートにもカラクリ機構が織り込まれ、途中で止めることが可能になった。こちらも構造はシンプルで、一時停止後は巻き取り方向だけに作動するリールによって実現。開くハッチゲートを手で押し止めるとリールがロックし、それ以上は開かない仕組みだ。
なお、電動式ハッチゲートの操作スイッチは左右スライドドアのレールに併設されており、使用時に後ずさりせずに済むが、後方に壁など障害物がある時にバリケードの役割を果たしていたユーザー(人間)が立たないため、距離感をつかめずゲートを接触させてしまわないよう注意が必要だ。
左右に持ち上げて格納する3列目シートの使い勝手が向上したのも朗報だ。これまでは持ち上げたシートをストラップで固定する方式だったため、固定時は当然ながら、戻す時にもシートの自重がかかっていてストラップの操作が大変だった。そこで今回はシンプルなロック機構を開発。ワンタッチで操作できる仕掛けに変わったため、チカラが不要になって使いやすくなった。
上級グレードでオットマンとシートヒーターも設定された2列目キャプテンシートは骨格からリニューアルされた効果もあり、微振動が解消されて乗り心地が改善された。
ノアS-Z(ハイブリッド)
●全長×全幅×全高:4695mm×1730mm×1895mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1670kg
●最小回転半径:5.5m
●パワートレイン:1.8L直4(98ps/14.5kg-m)&電気モーター(95ps/18.9kg-m)
●WLTCモード燃費:23.0km/L
●駆動方式:FF
●税込み価格:367.0万円(オプションを含まず)
ヴォクシーS-G(ガソリン)
●全長×全幅×全高:4695mm×1730mm×1895mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1610kg
●最小回転半径:5.5m
●パワートレイン:2L直4(170ps/20.6kg-m)
●WLTCモード燃費:15.0km/L
●駆動方式:FF
●税込み価格:309.0万円(オプションを含まず)