電動車ならではのテイストが強まった——これが新型アクアの試乗で強く抱いた印象だ。とにかく40km/hまではエンジンに頼らず、モーターだけで車速を上げていく設定になっている。かつてのトヨタ式ハイブリッドはドライバーのアクセルワーク次第でエンジンの始動するタイミングが変わり、絶妙なところで好燃費を成立させている感があった。しかし、新型アクアはモーターだけで走る領域が従来の2倍に増え(トヨタの発表値)、スロープ式の立体駐車場の4階まで一度もエンジンを始動させずに上ることさえできた。
これに大きく寄与しているのが新開発されたバイポーラ型ニッケル水素電池(1kWh。豊田自動織機製)だ。電動フォークリフト用の電池開発で技術を培ってきた豊田自動織機とともに開発された今回の新しい電池は、ひと言で言うと集電体の表裏に正極と負極を塗ることでコンパクト化。同じ容積に従来よりも多くのセルを搭載することができ、かつ電池内の抵抗が減って大電流が一気に流せる構造になった。その結果、電池の出力は先代の約2倍に高まった。
そもそも、同じGA-Bプラットフォーム採用のヤリスにHEVが設定されているのに、アクアの存在意義はどこにあるのか。製品企画の担当者は「コンパクトカーの分野でもSUV人気が高まっているが、まだまだ2BOXハッチバックの需要も根強い。そのため、ヤリスとアクアは共存できるだろう、と考えて企画した」「ヤリスはヨーロッパ市場も見据えたグローバルカーで、走る楽しさを追求。後席居住性よりもドライバーが楽しめるクルマだ。これに対してアクアは一家に1台のファミリーカーとして使えるよう、後席居住性にもこだわった」と棲み分けを説明する。インパネやコンソールリッドに合皮パッドが用いられて内外装にシックなカラーが揃っているのも、上質で高い質感を表現する狙いに基づいている。
エンジンの稼働領域が減ったことで静粛性も高まった。初代(の初期型)は充電時にエンジンがうなって「Bセグメントのクルマだから仕方ないか」と思わせる場面もあったが、新型アクアはエンジン始動に気づきにくいだけでなく、高速走行時の風切り音も少ない。その結果、今度はタイヤからのロードノイズが気になってしまう状態に。転がり抵抗の少ないタイヤ(銘柄はダンロップのエナセーブEC300+)を履いていることもあり、路面状況にかかわらず、絶えずゴーという低いロードノイズがつきまとう。
給電機能も有するAC100Vコンセント、センサーとカメラを使って駐車を支援してくれるアドバンスト・パーク(こちらに動画をアップしました)、渋滞中にも使える全車速追従型クルーズコントロール、踏み間違えによるアクセル全開時でも歩行者と自転車を検知した際に作動するプリクラッシュ・セーフティ、ストップランプ点灯がメーターパネル内で確認できる表示など、安全面も大きく進化した。飽きの来ないスッキリとしたエクステリアが継承された点も評価できる。