軽自動車が国内新車販売の4割近くを占める状況について自動車業界ではいろんな意見があります。
日本独特のカテゴリーである軽自動車に対して、ミニバンなど一部を除いて登録車はグローバルカーの右ハンドル車が主流になっています。年間330万台程度の登録車新車市場に外国メーカー車を合わせてたくさんのブランドが競合する現状では、国内専用モデルを投入しても採算が取れないからです。
ではなぜ軽自動車が新車の4割近くも売れるのか? サイズが日本の道路事情に合っている、車両価格が登録車に比べて相対的に安いなどの理由もありますが、やはり一番は租税など維持費の安さが大きいと思います。
特に地方では人口密度の低下、スポンジ化が進んでしまい、ドアツードアの移動はマイカーが主力になっています。ひとり一台も普通ですから、維持費の安さはとても重要ですね。
一方でクルマから得られる租税は地方自治体の重要な財源となっています。台あたり走行距離の低下、燃費の改善に伴い、燃油税も減っています。自動車税も登録車より圧倒的に安いのが軽自動車です。登録車が都道府県税、軽自動車が市町村税の違いはありますが、地方の重要な財源には違いありません。
こうした状況にいびつさを感じている人は多いように思います。税収を増やしたい地方自治体。軽自動車と登録車の燃費の差は小さくなっていますが、維持費の安さゆえに軽自動車を選択する人が多いユーザー。維持費とは関係なしに軽自動車を積極的に選んでいると主張する人には申し訳ありませんが、衝突安全性でも絶対サイズの小さい軽自動車は不利です。
世界がそうであるように軽自動車と登録車の枠を取っ払って「小さい車ほど維持費が安い」に一本化できれば、クルマの選択が多様化されるのではないかとの期待が、軽自動車を生産していないメーカーと、地方自治体にはあります。新車増販と税収増が見込めるからですね。
こうした動きを強く牽制してきたのが、長年、軽自動車販売を主力にしてきたスズキでありダイハツなわけです。とりわけ鈴木修スズキ会長のリーダーシップには大きなものがあります。スズキがもはや利益ベースでも販売台数ベースでも、同社の主力市場に位置づけられるインド市場の成長にかけるのは、国内での軽自動車カテゴリー廃止の可能性が見え隠れしているからと言うと言い過ぎでしょうか。スズキ自身も国内で登録車にチカラを入れてますね。スズキ独自の整備業を中心とした業販店網も人手不足、後継者不足、技術不足に直面しています。