系列販社と専業者で卸し価格を差別する トヨタ系部品流通子会社の不都合な真実

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系列販社と専業者で卸し価格を差別する
トヨタ系部品流通子会社の不都合な真実
高まる工賃単価見直し気運

損保各社が車体整備の業界団体である「日車協連」と協定工賃単価(レバーレート)の見直しに動いています。この動きは今後加速しそうです。

修理代金の多くは事故当事者が加入している自動車保険から損保が保険金として支払います。

損保と修理事業者はお互いに見積もりを出し、修理代金について合意した上で修理代金を保険金として支払うわけです。これを「協定」と言います。これが建前であり原則です。
 
どこをどう直すか、損保のアジャスターと修理事業者の見解が一致したら修理代金を折衝します。修理代金は時間あたり工賃と作業難度に応じた指数を掛け合わせて決められます。
 
「目安」という名の「マスト」
 
以前からお話ししているように「指数」として、全国的に普及しているのは、損保各社がお金を出し、東京海上日動火災が歴代の社長を出している「自研センター指数」です。自研センター指数について、損保はあくまでも「目安」だと言い張ってきました。目安だからほかに客観的な数値があれば、「事業者が提示すれば良い」と主張します。
 
が、国内には全国的に普及している指数はほかに存在しません。目安であるはずの自研センター指数を損保が協定の条件として持ち出すのはしばしばです。これに抗うことができる修理事業者は限られています。日本を代表する規模と人材、ノウハウを持つ損保に対して、理屈で対峙できる小規模のお店は少ないのが実態でしょう。
 
レバーレートの見直しを進めると同時に作業実態に見合った指数の見直しは、先ごろ国交省が示した「指針」にも盛り込まれています。今後の改善が期待されます。
修理代の過半は部品代
修理代金で大きな割合を占めるのが交換部品代です。中でも問題視しなければならないのが、自動車メーカーしか作れないボディパネルや駆動系の基幹部品です。「一般部品」と呼ばれます。この分野では競争がないため、価格はメーカーの言い値です。
 
「一般部品」に値下げ要求しない損保
 
また、なぜか損保は「一般部品」について、部品代の値引きを要求しません。協定工賃は容赦なく値引き要求するのにね。
 
卸値に差をつけるトヨタ
 
さらに問題なのは、メーカーがアフターマーケットに出す卸値に差をつけていることです。系列販社には3割程度のマージンを渡すのに、専業者が地域の部品商を経由して仕入れようとすると、5%程度のマージンしかありません。
サブディーラーが系列販社から仕入れる場合も同様です。修理事業者は「一般部品」では儲けがほぼありません。部品を仕入れる量が異なるとしても、この差は明らかに系列販社優遇であり、差別的です。
なお、トヨタはトヨタモビリティパーツ設立以降、下請け作業以外で地場修理事業者による系列販社からの部品仕入れを認めていません。まさに「粗利は系列の外に出さない」政策が見て取れます。
トヨタ自動車は今から5年前に、それまで系列販社手主導で運営されていた全国の部品卸し会社(部品共販)を全国組織に改めました。トヨタモビリティパーツに改組されました。
部品代が下がれば保険料も下がる

事故修理代金ですが、実はその7割程度を部品代が占めると言われます。部品代が下がり、卸値が下がれば、損害額の上昇で値上がりを続ける自動車保険料が下がる可能性すらあります。
ところが前述した通り、トヨタと系列販社は一般部品の出荷窓口を一本化することで、部品の売り上げと利益をトヨタ系列内で独占しようと画策しているのです。
トヨタは国内乗用車の半分のシェアを握っています。トヨタとトヨタモビリティパーツ、系列販社が自分たちで補修部品の利益を独占したままでは、事故修理事業者はもちろん、自動車保険加入者も報われません。
トヨタとトヨタ系列のため
記者は幾度となくトヨタ関係者から「トヨタは世のため人のため」に仕事をしていると聞かされてきました。けれども部品政策は「トヨタはトヨタとトヨタ系列のため」のやり方を強化しています。
「値下げに取り組む」と約束したはずが
昨年、私はトヨタモビリティパーツの幹部と面会し、卸し部品、中でも「一般部品」の値下げについて、「上代を下げ、系列販社と専業者の差を埋めるべき」と強く申し入れました。
トヨタモビリティパーツ側は、「前向きに検討する」趣旨の回答をしました。
年度替わりまで様子を見ていましたが、修理事業者からの通報を聞く限り、「値下げも行われず仕切りも改善されていない」ようです。
「カイゼン」の進捗状況について、本日、改めてトヨタモビリティパーツ側に質問を投げました。返事があり次第、皆さまと共有させていただきます。
自動車保険の料率上げの大きな言い訳の一つが部品代の高さです。ここに国内最大の部品卸し会社であるトヨタモビリティパーツが協力しないままでは、修理事業者も保険加入者も報われません。
トヨタ自動車とトヨタモビリティパーツは補修市場で模範を示すべきです。
文/神領 貢(マガジンx編集長)
マガジンX
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