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【アルピナB3GT&マセラティMC20チェロ】
「クルマの色気」を残す道
欲しいクルマがなくなってきた…。そう思っている人が増えたのではないだろうか。2024年は日本国内での新型車発売がめっきり減った。同時に国内市場は軽自動車か、小型HB(ハッチバック)または5ナンバーサイズの小型ミニバンが主流となり、クルマ選びの中心は「値段と燃費」になった。今回は「いつかこういうクルマに乗ってみたい」という基準で選んだ2台に試乗した。値段は高い。しかし色気がある。EU(欧州連合)は「みなさんBEV(バッテリー電気自動車)に乗ってください」と言い続けてきたが、結局は「安ければね…」とソッポを向く人のほうが多かった。しかし、この2台は違う。
最終世代のアルピナ
エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) 今回はかなり変則的な試乗だった。極めて少量生産の高価なモデルだったうえに、試乗コースはいつもの一般公道ではなくクローズドコースだった。とは言え、2台のモデルのポテンシャルは体感していただけたと思う。値段が値段だけに★評価をするつもりはない。こういうクルマは趣味の対象であり、嗜好品に対してああだこうだと言うつもりもない。皆さんも「好きか嫌いか」で語っていただきたい。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) 今回、皆さんに乗ってもらったのは、まずBMWアルピナ「B3リムジン」の2024年モデルだ。現在はモデル名にGTが付いているが、パワートレインは同じだ。ICE(内燃機関)はM3/M4と同じS58系の3リッター直6ツインターボで、最高出力は389kW/6250〜6500rpm、最大トルクは730Nm/2500〜4500rpm。AWD(オールラッド=全輪駆動)モデルだ。おそらくこれが最後のアルピナになるだろう。2027年モデルが発売される2026年秋は、アルピナはBMWが企画・製作をコントロールする。つまりBMWに吸収される予定だ。
自動車業界の事情通(以下=通) アルピナとBMWがその話で合意した時点では、「電動パワートレインへの全面移行」がその理由だと表向きは伝えられていたが、直接の理由はソフトウェアの書き換えを拒否するプログラムをBMWが導入したことだと思う。いま、世界中でこの問題が起きている。サプライヤーが新しい機能をOEM(自動車メーカー)に提案しようとしても、制御プログラムの書き換えはおろか、センサー類からの情報も車載機器の制御情報も取れない。
部品メーカーのエンジニア(以下=部) 外部からのハッキング対策とソフトウェアの「囲い込み」が狙いです。アルピナはICEと変速機の制御プログラムを独自に書き換えています。BMWとしては、たとえ付き合いの長いアルピナといえども、自社のモデルのソフトウェアをいじってほしくないはずです。アルピナのICEと変速機はBMWの市販車とまったく同じですが、プログラムが完全に差別化されています。ICEまわりで機械的な違いがあるのはターボチャージャーのインペラー/コンプレッサー径が大きいこと、インテークマニフォールド/エアクリーナー/排気系が別物であることくらいです。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) 変速機はZFの8HP系だからM3と同じだが、アルピナB3にはV8/V12用の大容量8HPであるタイプ76を載せている。それと前輪ドライブシャフトが違う。試乗していて通常のBMWのAWDとは違うと思ったら、さらに高トルク対応品が使われていた。パワーアップにともなってブレーキも強化されているが、サーボ特性を変えてドライバーの踏力コントロールを重視する設定になっている。ここはさすがだ。
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