産業技術研究所(産総研)、森林研究・整備機構 森林総合研究所(森林総研)、宮城化成、光岡自動車はスギから抽出した改質リグニンを用いたガラス繊維強化プラスチックで自動車用部品を製作し、実車に取り付けて評価試験を行う。
リグニンとは全ての木材に20~35%含まれている成分で、強固で耐熱性に優れた製品を作り出すことができる。ただ、樹木の種類や生育環境によって質が異なるため、均一性が求められる工業製品への起用は難しいとされてきた。そこで日本固有、しかも1種類しかないスギのリグニンを用い、ポリエチレングリコールを混ぜることで改質。この改質リグニンを繊維強化素材に使うと、広く一般的に使われている樹脂素材と比べて:
1)吸水率が低い
2)揮発性有機発生量が少ない
3)収縮率がゼロ%
の素材を作り出せることがわかったという。その素材が用いられたボンネットフードとドアトリムの耐久試験がこれから行われる。この素材研究は4年前に始まり、2022年の実用化をめざして引き続き研究開発が進められていく。
リグニンを取り出すにあたっては伐採をせずとも「焼却処分している端材・チップが有効活用でき、(林業の)製材工場も潤う」と森林総研の山田竜彦さんは説明する。
産総研の蛯名武雄さんは「現時点で問題は見つからない。実使用でどんな問題点が出てくるか探る必要がある」と品質に自信を見せる。コストに関しては「現状(の同等品)より安く供給できる数値目標を掲げており、達成できるだろう」との見通しを示した。
実際に部品を製造する宮城化成の小山昭彦社長は「現状の部品と比べて作りにくいが、研究を重ねれば現状のレベル(=作りやすさ)になるだろう」と語った。
ちなみに今回、光岡自動車が関わったのは以前から宮城化成と取り引きがあったから。光岡自動車の青木孝憲さんは「ハードな環境下での使われ方を想定する必要もある。(試験結果が良好で)結果が担保されるなら使っていきたい」と期待を寄せた。