特報!スバルが直面するまだ見えぬ危機!
コーナーミリ波レーダー開発も大幅遅延
スバルは2020年に、アイサイトVer4ステレオカメラにコーナーレーダーを追加する。初搭載はレヴォーグかアウトバック、レガシィなどが予定されている。
さらに2022年には、アセスメント対応のため、センサーにモービルアイの単眼カメラを追加する。現状、搭載車種は未定だ。
さて、2020年と見られるアイサイトVer4についてのサプライヤー選定は遅れに遅れた。最終的にはオートリブに決まったのだが、外資と組むことが問題ないのかどうかについて開発部門の上層部に異論もあり、決断をずっと先延ばしにしていた経緯がある。
この決断の遅れにより開発そのものも遅れてしまった。アイサイトVer4全体のスケジュールの遅れは半年以上になってしまったと言う。この半年の遅れが、車両開発全体のスケジュールにとっても致命傷となっているのは間違いない。
アイサイトVer4の開発スケジュールは遅れに遅れていて、オートリブ製のカメラを搭載したアイサイトVer4の試作機は「まだまともに動いてない」(事情通)状態だと言うのだ。
本来なら2018年にはアイサイトVer4の開発は完了していなければならないはず。年が変わろうとしている今の段階で開発も滞り、製品評価もできない状況では、アイサイトVer4搭載車両の市販化もいつになることやら。
開発現場のエンジニアたちには、「オートリブのステレオカメラを採用したアイサイトVer4の開発を完了させるのはもはや絶望的」と諦めムードが漂っている。
開発現場では開発中のアイサイトVer4自体をいったん中止にして、戦闘力のあるステレオカメラを、自社開発で作り直した方が良いとの意見も大きくなっている。
スバルはオートリブ製のミリ波レーダーの採用も決めている。2020年発売予定の新型車には、フロントのバンパーサイド両側にコーナーミリ波レーダーが装着される。アイサイトVer4の機能強化の一環で、対交差車両におけるセンシング機能向上に大いに役立つと期待されている。だが、実はこちらも開発が遅れている。アイサイト開発部門の責任者は現場の状況を把握しておらず、開発現場に対して、当初、経営陣に示した開発日程に「ミリ波レーダーの開発を期限内に間に合わせろと叱咤するだけ」(事情通)と憤る。いまの時代に、「技術論ではなく気合と根性でなんとかしろと言われてできるものでない」と嘆息する。
アイサイトVer4のキモであるステレオカメラとコーナーミリ波レーダーの開発が間に合わないと自動車アセスメントの点数が取れないことは明らか。リアルワールドでの安全追究よりもJNCAPでの高得点を期待してオートリブのステレオカメラ、モービルアイの単眼カメラと製品採用を決めたはずが、結局はそれもモノにできないとの危惧が開発現場には漂っている。
スバルのあるエンジニアはしみじみと語る。「負けるとわかっているステレオカメラを開発していてやる気など湧いてきませんよ。しかも2022年以降はモービルアイの単眼カメラ任せになりますしね」と。
スバルにとってアイサイトは、同社躍進の推進力となって来たが、いま、アイサイトVer4開発の混乱ぶりを取材するに至って、一般の人たちにはまだ見えぬ危機がスバルに迫っていると感じるのは記者だけではあるまい。続報を待て!
取材 文/神領 貢 マガジンX編集長