スズキは世界戦略BEVの第1弾となるeビターラを国内発表した(発売は26年1月16日)。
税込み価格は400万円を下回る399万3000〜492万8000円で、申請すればCEV補助金として87万円を受け取ることができる。
eビターラにはトヨタおよびダイハツと共同開発したBEV専用プラットフォームが起用され、安全性の高さを優先してリン酸鉄リチウムイオン電池を起用。また、前輪駆動モデルに加えて前後ツインモーター搭載の4WDモデルもラインナップされている。
アクセルペダルのみで車速を調整できるイージードライブペダル、ペダル操作時のレスポンスを3段階に切り替えられるドライブモードが装備されている。
4WDモデルは常に後輪モーターも駆動するフルタイム方式だ。空転する車輪を制動して接地輪に駆動力を伝えるブレーキLSD採用のトレイルモードも備わっており、未舗装路で高い走破性を発揮する。
ブラック&ブラウンのコーディネートで上質さが表現されているインテリアには、継ぎ目のない1枚ガラスでメーターパネル(10.25インチ)とインフォテイメント画面(10.1インチ)が覆われたインテグレーテッド・ディスプレイを採用。タッチスクリーンはドラッグ&ドロップでメニュー画面の内容および配列を変えることができ、3タイプのデザインから選べるメーターパネルとともに自分好みに仕立てられる。

都内で行われた報道発表会で鈴木俊宏・社長は「BEVの販売は減速しているが、今後比率は上がっていくだろう。適材適所にBEVを投入していく」と語った。
スズキなら、まずは軽BEVから発売しそうだが?と感じる人も多いだろう。鈴木社長も「BEVは近場の移動に適している」としながらも「ある程度の価格をつけられて、高くても買ってもらえるクルマから始めた」としてeビターラを第1弾に定めた旨を説明した。
BEVが身近ではなく、まだ手を出せないと感じている人が多いのは事実。鈴木社長は「ネガティブな印象が強いものの、BEVの特性にハマる消費者は多いはず。そういう顧客をつかんでいきたい」と意気込む。決して追い風ではなく、むしろ逆風の状況下であることは認識しているようで「グローバルで見るとBEVが投げ売りされている国もあるが、成長させる気はあるのか?と感じる。(その状況に)当社はついていけない。焦らず、顧客の要望を理解した上で、使いたいと思われるBEVを狙っていきたい」とした。

左からチーフエンジニアの小野純生さん、鈴木俊宏 社長、日本営業本部長の玉越義猛さん。
400万円を切るエントリー価格は驚きだが、鈴木社長は「弊社初のBEVなので、侃侃諤諤(かんかんがくがく)いろんな議論をして決めた。ホンネは1円でも高く売りたい」とした上で「エンジン車とは売り方も変えていかねば」「高いから売れない、では困る」とコメントした。
販売目標や計画は公表されていない。鈴木社長は「インドで他社の状況を見ていると、平均して月販1500から2000台は売れているので、(現地で)2000台は売りたい」とコメントしたものの、国内での計画については明言しなかった。
常務役員で日本営業本部長の玉越義猛さんは「4WDモデルも存在するコンパクトBEVはニッチな存在。需要はあると手応えを感じている」と話した。
先週ホンダはN-ONE e:を発表したが、取材を通して両社の補助金に対する見方が正反対なのが面白いと感じた。
ホンダで日本統括営業部長を務めている川坂英生さんは「活用させていただく」とした一方で、スズキの鈴木社長は「補助金や値引きに頼らず、BEV黎明期のうちから売るチカラをつけていきたい。補助金をずっと出してもらえるならいいけれど、いつかはなくなる」として、補助金に頼る売り方は「間違っている」と語った。