97年に初代ハリアーとして国内で発売された後、98年に海外で売り出されたRXは高級クロスオーバーSUVの先駆車として市場を開拓したパイオニアだ。95の国と地域で販売されて累計販売台数は362万台(国内は12万9000台)に達し、いまでは年間20万台が売れていてレクサスのグローバル販売の約3割を占めている。
そして5代目にあたる新型RXが正式デビューを果たした。基礎となるシャシーにはGA-Kプラットフォームの改良版を新採用。全長は据え置かれたが、ホイールベースは60mm延長され、前後トレッドも拡幅された。重心は15mm低下。シャシーが大幅改良された理由のひとつは後輪サスペンションを一新するためで、新たにマルチリンク式が開発された。
一番の注目株はシリーズ最高峰の2.4L直4ターボHEVだ。RX350と同じエンジン(チューニングは異なる)にモーターとトルコンレスの6速AT、後輪を駆動するeアクスルが組み合わされた、まさにテンコ盛りな1台である。基本的な内容はクラウンで実用化されたユニットと同じだが、本来ならRXで先に世に送り出されるはずだった。
その走りと運動性能は高いレベルに仕上がっていて「これがSUVなのか?」と思わず疑ってしまうほど。235/50R21タイヤを履いていて最大4度の舵角が発生する後輪ステアリングの効果もあり、しっかりと路面をつかんでワインディングも颯爽と駆け抜けることができる。かと言って加速は暴力的ではなく、手に負えずに恐怖を感じてしまうような“じゃじゃ馬”ではない。なるほど、開発責任者の大野貴明さんが「安全・安心を前提にした上で、RXでもこんなクルマが作れることを示したかった」と話すように、これまでのRXが持ち合わせていなかった新たな一面を垣間見ることができる。
前述した超扁平タイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地の質は高く、路面からの突き上げや振動はほとんど感じられない。少なくとも街乗りや郊外路で不快に感じることはないだろう。サイドサポートの張り出し量が大きく、カラダをしっかりと支えてくれるF-SPORT専用シートの採用も見逃せない。
全車に標準装備される14インチのタッチスクリーンには通信型ナビが内蔵されている。また「Heyレクサス」の呼びかけで起動する音声認識エージェントは精度も高く、運転に集中しながら各種操作が行えて便利だ。先代のセンターコンソールに設置されていたリモートタッチは廃止されたが、音声操作が本格化する時代に合わせての変更だろう。
NXで初採用された前後ドアのeラッチ、いわゆる電気式ラッチは全車に備わっている。NXではとにかく半ドアに悩まされたが、RXでは多少改善されたのか、半ドアになってしまう回数は少なかった(でもゼロではなかった)。イージークローザーが装備されたら開け閉めの両方で力加減が揃って意識の中でチグハグが生じることもなくなるはずだが、はたして採用される可能性はあるだろうか。
「今日のSUVにはカッコよさ、広さ、荷物がたくさん積める積載性、走りの良さの全ての要素が求められる」と大野さんが語るように、ユーザーのニーズは日に日にレベルが上がっている。海外のプレミアムSUVもライバル視する新型RXはそれらを満たす1台に仕上がっており、今後もレクサスのベストセラーとして君臨し続けることだろう。
主要スペック(RX500h F-SPORTパフォーマンス)
●全長×全幅×全高:4890mm×1920mm×1700mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:2100kg
●パワートレイン:2.4L直4ターボ(275ps/46.9kg-m)&モーター(87ps/29.8kg-m)+eアクスル(103ps/17.2kg-m)
●WLTCモード燃費:14.4㎞/L
●駆動方式:4WD
●税込み価格:900.0万円