アルトが7年ぶりにフルモデルチェンジされて9代目にバトンタッチを果たした。
最大のポイントはアルト初のマイルドHEV(ハイブリッド仕様)が設定されたことで、先代から定評のある軽い車体と相まってWLTCモード燃費で軽自動車トップの27.7km/ Lを達成している。
HEVの心臓部は最新のR06D型エンジンにISG(スターター兼ジェネレーター)とリチウムイオン電池が組み合わされ、発進加速や中間加速などエンジンの燃焼が大きく変位する時にISGがアシストする。これによって燃費が改善され、街中試乗では約23km/Lをマークした。なお、HEV以外のモデルにはISGの容量が小さくてアシスト機能を持たないエネチャージが採用されている。
プラットフォームには先代で初採用されたHEARTECTが継承されているが、側突法規に対応するために車体中央に横方向のメンバーを追加。また、ドア開口部、この中央メンバーとセンターピラー、ハッチゲート開口部の3カ所に環状骨格構造が新たに取り入れられている。「HEARTECTで車台の剛性を上げることができ、今度はクルマ全体のレベルを向上させるために上屋(ボディ)の剛性アップに取り組んだ」とスズキ株式会社・四輪商品第一部でアシスタント・チーフエンジニアを務めている渡邉司さんは話す。
試乗したところ、こうした取り組みの成果として静粛性と乗り心地がバランスよく向上していることを実感した。サスペンションが突っ張った印象もなく、路面の凹凸では巧みに衝撃をいなして乗り味に安っぽさを感じることもなかった。転がり抵抗の少ないタイヤにありがちなロードノイズも抑えられており、他の部分で発生するノイズ(例えば風切り音やメカ音)ともバランスが取れている。100万円+αの価格を加味すれば、十分に満足できるレベルだ。タイヤサイズは全車155/65R14で、銘柄はダンロップのエナセーブEC300+。
ネイビーとブラウンでコーディネートされて抑揚のある表情に仕立てられたシートは温かみを感じさせる。十分に広い前後乗員間隔は先代と変わっていないが、サイドウインドウの面積が拡大されてルーフが後方に延長されたことで広々感が増した。「シート前面やドアトリムにネイビーを、シート背面にブラウンを用いてコントラストとリズム感のある配色に仕上げたのも広さを感じる要因のひとつ」と渡邉さんは解説する。
インパネの一部にもネイビーが配されて高品位なイメージが作り出されているが、逆にシフトレバーと空調パネルが並ぶセンタークラスターは装飾もなく質素な印象が強い。グローブボックス上方と左右席の間にはトレイが設置されていて収納スペースには困らない。
ラゲッジ床面長はフル乗車時が425mm、左右一体式のリアシートを前倒しすれば1225mmに達する。トノカバーはディーラーオプション(1万2155円。取付け費込み)で用意されている。
デュアルカメラ式の衝突被害軽減ブレーキやサイド&カーテンエアバッグ、ISG、そして当然エアコンやパワーウインドウといった快適装備も装備しながら95万円を下回るエントリー価格を実現している新型アルトが“日本最強のゲタ”であることは間違いない。
主要スペック(ハイブリッドX)
●全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1525mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:710 kg
●最小回転半径:4.4m
●パワートレイン:660㏄直3(49ps/5.9kg-m)&電気モーター(2.6ps/4.1kg-m)
●WLTCモード燃費:27.7km/L
●駆動方式:FF
●税込み価格:125万9500円(オプションを含まず)