2010年に初代が発売されて以来、累計70万台が売れて総走行距離が280億kmを突破したリーフ。6月にワールドプレミアされたように、まもなく3代目が投入される。すでに概要は公表されているが、国内仕様の詳しい内容が判明した。
新型リーフは78kWhバッテリー搭載の「B7」と、55kWhバッテリー搭載の「B5」から選べる。それぞれに量販モデルのXグレードと上級装備が揃うイメージリーダーのGグレードが用意されるほか、B5には廉価版のSグレードも設定される。
パワートレインには数年前に存在が明かされた3in 1ユニット(モーター、インバーター、減速機を一体化)を新採用。ユニットからのノイズが抑えられ、さらには風切り音も低減されて静粛性に磨きがかかる。
アクセルペダルを踏んだ時の加速力はドライブモード(3段階)で、足を離した時の減速力はeペダルステップ(ONまたはOFF)で切り替えられる。さらに、最上級のGグレードには手元で減速力を4段階に変えられるパドルスイッチが新たに備わる。
航続距離(カタログ値)はB7が702km、B5が490km。150kW充電器にも対応し、30分の急速充電でB7は470km分、B5は330km分の電気を充電できる性能を持ち合わせる。
ナビでルートを設定している時に先読みし、バッテリー温度を管理してムダに温めたり冷やしたりしないようコントロールする機能も見逃せない。これによって電費が向上し、経路途中の急速充電時に効率よく充電できるという。
最上級のGグレードには235/45R19タイヤ&アルミホイール、アダプティブLEDヘッドランプ、左右ヘッドランプを結ぶLEDライン、3Dホログラムテールランプ、電動ハッチゲート、回生ブレーキコントロールパドル、プロパイロット・パーキング、ヘッドアップ・ディスプレイ、テーラーフィット(=合皮)シート、前席パワーシート、運転席ドラポジメモリー機能、64色アンビエント照明、ヘッドレストスピーカーを含むBOSE製オーディオが標準装備される。
一方、エントリーモデルのSグレードを中核のXグレードと比べると、アルミホイール、アラウンドビューモニター、ステアリングヒーター、電子ルームミラー、グローブボックス照明、バニティミラー照明、後席アームレスト&カップホルダー、後席USB充電ポート、ヒートポンプ式暖房、Googleビルトイン、前後ドラレコ、ETC2.0車載器、ワイヤレス充電が省かれ、タクシーなど法人需要を見込んでいることが予想できる。
とはいえ、プロパイロット、ディスタンスコントロール機能(後述)、電動格納式ドアハンドル、インテリジェントキー、電動パーキングブレーキ、ナビを含む12.3インチ画面、前席シートヒーターは標準化されるため、プライベート用に購入してもファーストカーとして十分に満足できるに違いない。
大径タイヤを与えられてSUVテイストが強まるものの、新型リーフはCd値0.26をマークする。これはファストバック・シルエットだけでなく、25km/h以上で自動的に格納されるフラッシュサーフェス仕上げのドアハンドル、グリルシャッター、徹底的に覆われてフラット化されたアンダーフロアの恩恵でもある。
フロントオーバーハングが200mmも切り詰められ、全長は120mm短い4360mmに設定。全高は立体駐車場に入庫可能な1550mmに抑えられる点が朗報だ(プロパイロット2.0装着車は1565mm)。
「ニIII(ニッサン)」をモチーフにした3Dホログラムテールランプは夜間に個性を放つ、こだわりを感じさせる部分のひとつだ。フェアレディZに採用済みだが、あちらは見た目の奥行きが約1.2cm。それに対して新型リーフでは約4cmの立体感を実現。しかも厚さ2mmのインナーレンズで実現しているというから驚きだ(フェアレディZのインナーレンズは深さ2.5cm)。採用が最上級グレードに限られるのが惜しい!
ボディカラーはツートン3パターンとモノトーン5色から選べる(Sグレードはモノトーンのみ)。
ブラックルーフが組み合わされるツートンはルミナスターコイズP、ディープクリムゾンP、プリズムホワイトPの3色。モノトーンはプリズムホワイトP、ミッドナイトブラックP、ディープオーシャンブルーP、ダークメタルグレーM、シェルブロンドM。
余談ながら北米仕様にはダークメタルグレーM/ブラックルーフが存在する代わりにシェルブロンドMは用意されていない。
内装色は、テーラーフィットシート採用のGグレードがホワイト/ブルーパープルまたはブラックモノトーンから、Xグレードはグレーモノトーンまたはブラックモノトーンから選択できる。Sグレードはブラックモノトーンのみ。
センタートンネルが廃止されて後席に広々感がもたらされるだけでなく、シフトセレクターがボタン式に改められて各種ユニット類が小型化されることで前席足元にも広い空間が確保される。アリアのような行灯照明は設定されないものの、ディーラーオプションでフロアマット中央を照らすプロジェクション照明を用意。後席に2段階のリクライニング機構が新設されるのも目新しいポイントだ。
64色から選べるGグレードのアンビエント照明は4つのテーマ(パッション/ディライト/ディスカバリー/ハーモニー)に推奨カラー4色ずつ計16色を設定。それ以外の色もカラーパレットから自由に選べる。また、プロパイロット2.0装着時にはモードに応じて色が変わる仕掛けも織り込まれる。
フル乗車時のラゲッジ奥行きは789mmから861mmに増え、荷室幅も30mm増の1041mmに広がる。これによってゴルフバッグ2個または大型スーツケース2個が載せられる。リアシート前倒し時にフラットフロアを作り出すラゲッジボードと、目隠しになるトノボードはディーラーオプション。
運転支援デバイスではプロパイロット2.0、ディスタンス(車間)コントロール、前後ドラレコ、車外から操作できるプロパイロットリモートパーキング、先行車発進お知らせ機能の採用が目新しい(現行モデルには未設定だった)。
スカイラインで実用化された後、現在はアリアなどに設定されているプロパイロット2.0だが、新型リーフでは分岐や出口でのアシストが省かれる。これは制限速度に忠実に車速が制御されることで、逆に実際の交通の流れにそぐわないためかもしれない。XおよびGグレードにオプション設定。
新機構のディスタンスコントロールはアクセルOFF時に前方の停止車両との距離を測定して最適な減速Gを発生。停車後もブレーキを保持する機能だ。ストップ&ゴーの多い街中でペダルの踏み換え頻度が減り、結果的に疲労軽減につながりそう。ステアリングホイールのプロパイロットスイッチを1回プッシュすれば起動する。全車に標準装備。
専用パーツでドレスアップしたAUTECHはモデルチェンジ後も設定される(ベースにはGグレードを起用)。ボディ下部にメタル調ガーニッシュが装着されてメッシュデザインの専用アルミホイールやブルーLEDランプも用いられ、専用外板色としてディープオーシャンブルーP/ブラックルーフを設定。内装ではブルーステッチ入りのブラックシートが特別感を演出。
新型リーフはBEV普及に加え、日産に対する消費者の信頼回復という使命も担う。まずはB7が26年1月15日に発売される(B5は追って登場する模様)。現行ユーザーだけでなく、プリウスやハリアー所有者の獲得にも力が注がれて年間1万6800台(月間1400台)の販売(モデルライフを通しての平均値)が計画されている。参考までに、現行モデルは月販平均1350台だった。
23年度の国内BEVシェアは1.8%で、相変わらず航続距離や充電時間、電池の耐用年数、充電インフラに対する不安は払拭されていない。これらのネガティブイメージから脱却するためにも、12月に入るとテレビCMが積極的に放映されて消費者の来店を促す取り組みが始まる。