6月27日に発表された新型フリードは最新のホンダ・テイストに基づき、シンプル&スッキリとした印象に仕上がっている。ウエストラインが水平に設計されたことで車内から見える景色の違和感が解消され、リアクォーターウインドウは三角形からスクエア基調に一新されて3列目シートにおける閉塞感が解消された。
標準車はステップワゴンに続いてAIRと命名され、余計な装飾が省かれていて飽きの来ない無垢な雰囲気が自慢だ。
一方、先代モデルの途中で追加されたクロスターは引き続きSUVテイストを持ち合わせ、新たにホイールアーチモールが装着されて3ナンバー幅に成長。こちらにはツヤありシルバーの外装パーツが採用されていて作り込まれた印象に仕上がっている。
プラットフォームは先代から流用されてホイールベースは2740mmのまま変わっていないが、ハイブリッド機構の刷新に伴って全長は45mm拡大された。また、2列目シートのレッグスペースは30mm広がって快適性が向上。1列目と2列目の各シートは肩口部分とヘッドレストの形状が見直されてウォークスルーの行いやすさと見晴らしの良さが改善されたのも特徴のひとつだ
2列目にはクラス唯一のキャプテンシートとオーソドックスなベンチシートの2種類が設定されており、乗り比べたところ、前者のほうがサポート感と快適性は高いと感じた。ベンチシートは柔らかさが気になり、座った時の沈み込み量がキャプテンシートよりも多くてヒザの浮く姿勢になるため、長時間ドライブで疲れを感じやすいかもしれない。欲を言えばキャプテンシートのアームレストを最適な角度にセットできる調整機能があればベターだが、開発関係者は「価格とのバランスも考え、ユーザーの求める期待値がどの辺りなのか悩んだ」と事情を明かす。
参考までに、新型モデルの受注構成比は5人乗りが18%、6人乗りが73%、7人乗りが9%で、圧倒的にキャプテンシート車が支持されている。
3列目シートは座り心地とサイズが重視されて床下収納式ではなく、引き続き左右はね上げ式に設計されている。これはフリード購入者の多くが3列目シートにおける居心地の良さを重視するためだという。
ステアリングホイールの内側から視認するインホイール式メーターはフィットと同じシンプルな7インチTFTタイプで、HEVも含めて全車に物理タイプのシフトレバーが用いられて直感的なわかりやすさが備わっている。ワンモーション・フォルムの先代には大きな三角窓が採用されていたが、シングルピラーに変更することで前輪の位置が把握しやすくなった。実際に運転してみると、大きなクルマを扱っている感覚に陥ることもなく、それでも十分な視界が確保されていて見晴らしは良好と感じた。
収納面では助手席前方のパッドを兼ねるリッドを開くとティッシュボックスの収まるスペースが現れる。また、その手前にはテクスチャ紋様のシボが施されたオープントレイが用意されている。
室内の広いミニバンで空調をムラなく行き渡らせることは容易ではない。そこで、新型フリードではクラス初の後席用クーラーを天井に設置。3列目シートまで冷気を届けることで快適に過ごせる。このクーラーはインパネから操作できるほか、コネクト機能で車外からも乗車前にONにできる。
新型フリードの大きなトピックがハイブリッド機構の進化だ。ホンダ車の中で最後まで使われていた1モーター式のi-DCDに代わって2モーター式のe:HEVが用いられ、電動車ならではのテイストが大幅に高まった。このシステムは日常域ではモーターで走ってBEVのような顔を見せるが、高速域ではクラッチが締結してエンジン駆動に変わる。強い加速時にはエンジン回転数が制御され、有段ATのような走行フィールを味わうことができる。
要改善ポイントを挙げるとすれば、アクセルペダルの感触だ。アクセル操作に対するレスポンスが過敏になりすぎないようチューニングしたと開発関係者は話すが、わずかに踏んだ時のバネ感にはクセがある。
このe:HEVの受注構成比は85%まで上振れしているそうだ。ちなみに先代のハイブリッド比率は56%だったので、いかに伸びているか、よくわかる。
試乗を通して、フリードを買うならキャプテンシート採用の6人乗りが断然オススメと感じた。インパネのパッドにもクロスが貼られ、シートにソファーのようなファブリック表皮が使われているAIRを是非ディーラー店頭で確かめてほしい。詳しいグレード展開と価格はこちらからどうぞ。
(この記事は抜粋版です。全文は7月26日発売予定のマガジンX 9月号に掲載しますので、併せてご覧ください。電子版と紙の雑誌をご用意しているほか、書店や一部コンビニでもお買い求めいただけます)