トヨタ カスタマイジング&ディベロップメント(以下TCD)が公正取引委員会から下請法に基づく勧告を受けた。
TCDはトヨタ車のドレスアップ用品や特装車を手がけているグループ企業で、トヨタ自動車が株式の90.5%を保有している。トヨタテクノクラフト株式会社、株式会社トヨタモデリスタインターナショナル、株式会社ジェータックスの3社が18年に統合されて設立された。
今回の件は23年5月に公正取引委員会から調査要請が出され、同7月から調査開始。その結果「不当な返品」と「金型等保管費用の未払い」が指摘された。TCDは両件とも取引における誤認が原因だったと釈明している。
不当な返品
本来、取引先から納入される製品の品質をTCD自らもしくは取引先に文書で委任して確認され、不具合が発見された場合には双方で確認&合意した上で返品が生じる。ところが今回の案件では取引先の出荷前検査を品質確認のプロセスの一環であると誤認し、前出の品質検査を実施しないまま返品を行っていた。対象となる取引先は65社で、返品分の代金相当額である約5400万円は支払済みだという。
金型等保管費用の未払い
TCDが仕入れている製品は(1)金型が取引先所有の資産であるケース、(2)金型がTCDの資産で貸与しているケース、の2パターンがある。(2)の場合、部品単価とは別に金型の保管費用を支払う必要があるが、TCDはこれが部品費用に含まれていると誤認していた。この案件に該当する取引先は49社(対象金型は664個)で補償の協議は始まっているが、まだ具体的な費用の算出には至っていないという。
都内で会見に臨んだTCDの西脇憲三社長はこうした事案が発生したことを陳謝。その要因は「いま行っている仕事に間違いはないという慢心・過信があった。従業員は日々忙しくて前例を踏襲し、カイゼンする余力がなかったのかもしれない」とした上で「立ち止まって経営のあり方を見直し、ほかに問題がないか総点検していきたい」と話した。
親会社であるトヨタ自動車とは違うルールで業務が行われているのか?との質問に対して西脇社長は「取り扱っている商品も規模も体制も異なるので、違うルールで業務を進めている」と回答。このルールはトヨタ自動車とは共有されていないという。
また、これまで社内で違反に気づくチャンスはなかったのか?と問われた西脇社長は「チカラがなかった。自発的に発見できる体制に変えていくことが私の使命」「社内で違反しているとの認識はなかったと現時点では確信している」「悪意を持って仕事をしている従業員はいないと信じている」と答えた。