低圧燃料ポンプ不具合のリコール
ホンダNシリーズで国内210万台超える
6月2日、ホンダはN-BOXなど同社の主力モデルであるNシリーズ、S660で約30万7000台のリコールを発表した。「低圧燃料ポンプのインペラ(樹脂製羽根車)において、成形条件が不適切 なため、樹脂密度が低くなって、燃料により膨潤して変形することがある。 そのため、インペラがポンプカバーと接触して燃料ポンプが作動不良となり、 最悪の場合、走行中エンストに至るおそれがある」ものだ。
部品会社名こそ公表されていないが、一連のリコール対象の「ポンプはデンソー製で間違いない」(事情通)と言われる。同じ部品ではこれまでも不具合が多数見つかっている。そのため同ポンプの不具合にともなう搭載車両のリコール数も月を追うごとに増えているのが現状だ。
国交省リコール監理室にこれまでのメーカー別リコール台数を聞いた。 それによると、●トヨタ32万台●ホンダ57万台●ダイハツ110万台●スズキ3万台●スバル 1.4万台●マツダ4万台など。概算なので総数は若干違うが、「国内全体で燃料ポンプの不具合は210万台超ある」と教えてくれた。なお、ホンダを除く既発表分のうち「9割は改修済み」とのことだった。海外分については「数値を把握していない」(リコール監理室)としている。
デンソーに聞いた。同社広報部は、「リコールはカーメーカー様のご判断により実施されるものであることから、当社は回答する立場にないことをお伝えさせていただきます」と前置きした上で、以下のように回答した。「当社の品質問題に対し、多大なるご迷惑・ご心配をおかけしているユーザー様、OEMのお客様に深くお詫び申し上げます。OEM(組立メーカー)様と共に、真摯に対応をしております。当社では2020年度よりReborn21と題した変革活動において「品質の再出発」をスローガンに掲げ、全社一丸で知識・意識・風土の改革に取り組んできました。これからも引き続き、品質こそが私たちの生命線であり、デンソーの原点であるということを忘れずに、事業活動に取り組む所存です」。
どうだろうか。燃料ポンプが自社製であることすら認めず、不具合の原因や対策等についても一切の言及がない。「木で鼻を括った」とはまさにこのことだろう。こんな態度だからいつまで経っても責任の所在が明らかにならないのではないか。
デンソーは責任を認めない、OEMは詳細を答えない、当局は「ウォッチはしている」(審査・リコール課)というものの、特に指導している気配はない。記者は課長に対して、「建前は組立メーカーのクルマであっても対象が多くのメーカーに及んでいる。消費者に対して適切な情報提供をすべき。デンソーに対しても説明責任を果たすよう指導すべき」と話しておいた。
事情通が語る。「毎夜帰り道にディーラーの前を通ると夜中でも明かりがついている。国は市場措置を発表し、改修状況を管理するだけだが、メカニックが夜中まで働いているのを見ると胸が痛む」と語る。ユーザーもメカニックも結局被害者ということになる。デンソーはこのままダンマリを決め込むのだろうか。