財務省国土交通2.3課係に取材に行ったのが、12月7日の水曜日。1週間ほど前だ。目的は、●自賠責保険積立金繰戻しと、クルマ関連諸税における「当分の間税率」撤廃の財務省の態度について。
結論から言うと、担当者はどちらの案件についても責任ある発言をすることはなかった。
さて、記事の本論は添付したクルマ関連税の歳入と歳出のグラフである。取材の折にもらったものだ。ここに出てくる「歳入6.2兆円」と「歳出7.8兆円」の数字。なんだか変である。まず統計年度が結構古い。平成30年度(2018年度)のものだ。財務当局ならこの程度の数字など確認するのは朝飯前と言えるレベルである。なのに4年も前の数字だ。
よくよく見ていて気がついた。消費税が8%から10%に引き上げられたのは、この統計年度の翌年である2019年10月のことだ。だから増税と共に廃止された「自動車取得税」が歳入項目に入っているのである。取得税3%(軽自動車2%)は、消費税増税とともに廃止され、その代わりに「環境性能割」が導入されたのは記憶に新しい。
●歳入側には消費税が抜け落ちている。クルマ関連諸税は平成21年度(2009年度)には一般財源化されている。「歳入」を言うならユーザーがクルマ関連で支払った消費税相当額も「歳入」にカウントされて然るべきだろう。ガソリンの「タックス・オン・タックス」も見て見ぬ振りなのだろうか。
●「歳出」にも問題ありだ。「農道」「林道」は農水省の所管である。交通安全対策も一部に国交省所管はあるものの、基本的には道交法を司する警察庁の所管だ。「救急」は総務省だし、「環境」も一部重複するが「環境省」所管と考えるのが妥当だろう。それらを全部ひっくるめて「道路関係の支出」として、「旧道路特定財源(クルマ関連諸税)の歳入よりも支出が多い」言わんばかりのグラフを、暮れも押し迫り、間も無く次年度政府予算案が閣議決定されるこの時期に、記者に配るのはどんな狙いがあるのだろうか。財務官僚の薄っぺらな意図が透けて見えるというものだ。
本件、作文の上手な財務省である。担当者に問い合わせている。回答があり次第、読者の皆様に報告させていただきます。それにしても渡された「意味不明」のデータをそのまま鵜呑みにして報道する記者は何を考えているのだろうか。
取材・文/神領 貢(マガジンX編集長)