シトロエンのフラッグシップにあたるC5Xが8月29日に国内でも発表された(発売は10月1日の予定)。
C5Xはセダンの快適性、ステーションワゴンの実用性、SUVの力強さを併せ持つ1台で、パワートレインには1.6L直4ターボ搭載のガソリン車(180ps/250Nm)と、このエンジンに前輪モーターが組み合わされたPHEV(システム出力225ps)の2種類が用意されている。国内の輸入車マーケットではディーゼル車が一定の支持を得ているが、かつてと違って欧州では下火になっているため設定は見送られた。
ロングノーズと2785mmの長いホイールベースによってエクステリアはスレンダーな印象に仕上がっている。ただ、足元には205/55R19の大径タイヤが与えられていて華奢な印象は微塵もなく、SUVゆずりの力強さが上手く演出されている。おかげでヒップポイントは一般的なセダンよりも高めに設定されていて乗り降りしやすい。
そのエクステリア以上に注目したいのが、日本人デザイナーが手がけた内装だ。注目すべき点はいくつもあるが、例えばインパネからドアにかけて配された木目調パネルは落ち着いた印象をもたらしている。同じモチーフがシートバックにもアクセントとして用いられているのが面白い。さらに、シートに織り込まれたステッチとパーフォレーション処理もダブルシェブロンがモチーフで、こうしたディテールにもこだわりが見られる。また、シートの表層部には厚さ15mmのスポンジが挟み込まれているおかげで、本革シートにありがちな強い張りや反発を感じずに済む。
コンソール前方はピアノブラック仕上げで、カップホルダーをはじめ、トグルスイッチ式のシフトセレクター、シーソースイッチ式のドライブモード・セレクター、電動パーキングブレーキが配されている。各スイッチに刻まれた歯車風のメカニカルな造形パターンもユニークだ。
試乗したガソリン車は出足が“おっとり”としていて、大径タイヤから連想される力強さよりも優雅な味わいが強い。同じパワートレインを搭載するDS9(225ps/300Nm)より出力が抑えられているため、印象は異なる。ただ、低速時に時々8速ATのジャダーが顔を覗かせる点は変わっておらず、今後のブラッシュアップに期待したい。
足元にはC5エアクロスに続いてPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)が採用されている。一般的なダンパーでは大ストローク時にゴムやウレタン製のバンプラバーが衝撃を吸収して反発力が発生し、乗り心地悪化につながる。しかし、PHCにはセカンダリーダンパーが組み込まれており、これを回避。試乗したところ、車速が70km/hを超えた辺りから路面に吸いつく印象が強まったため、高速クルーズのような場面で恩恵を享受できそうだ。
主要スペック(SHINE PACK)
●全長×全幅×全高:4805mm×1865mm×1490mm
●ホイールベース:2785mm
●車両重量:1520kg
●最小回転半径:5.6m
●パワートレイン:1.6 L直4ターボ(180ps/250Nm)
●WLTCモード燃費:未測定
●駆動方式:FF
●税込み価格:530.0万円(オプションを含まず)