日産自動車は8月30日、昨年の5月から取り組んでいる日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」活動を加速させ、2019年度末までに30以上の自治体や企業と災害連携協定などで連携していくことを発表した。
日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」とは、電気自動車の普及によって温暖化対策や災害対策、過疎、観光、エネルギーマネジメントといったさまざまな課題を解決するために多くの自治体や企業と連携していく取り組みのことで、これまでに日産は8自治体・1企業と連携協定を締結している。
日産の電気自動車リーフは2010年に初代モデルを発売し、2017年10月には2代目にモデルチェンジ。今年の1月にはバッテリー容量を62kWhにまで高めたリーフe+を追加設定している。初期の24kWhから比べるとバッテリー容量は約2.5倍、1充填当たりの走行可能距離は200㎞から570㎞(JC08モード値)と約3倍近くまで延びている。走行距離、価格などが自家用車として十分実用に耐えるようになっただけでなく、一般家庭における平均的な電力使用量が10〜15kWh/日と言われているため、リーフ(40kWh/62kWh)を「蓄電池」として活用すれば一般家庭2〜4日分の電気をまかなうことも可能となっている。
昨年は北海道胆振東部地震だけでなく、7月豪雨やたび重なる台風の影響によって停電件数は約700万戸以上となった。なかでも北海道地震では道内全域がブラックアウトとなり、電力供給再開まで数日〜1週間、完全復旧までは1カ月も要して深刻な社会問題となった。さらには太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)での売電期間(10kW未満10年)が今年の11月以降順次終了することを受けて、売電するのではなく自家消費しようという動きが活発化しており、電気自動車を蓄電池として活用するV2H(Vehicle to Home)がにわかに注目を集めている。北海道地震においても札幌市内で唯一灯りのついていた一軒家ではV2Hを活用していたという。
こうした事例から、「走る蓄電池」としての電気自動車の新たな価値・有用性に気づいたことで、とくに自治体からは停電時の電力源としてリーフを活用したいという声が多く日産によせられていた。そこで日産はリーフの国内販売累計10万台を記念したフォーラムにおいて「ブルー・スイッチ」活動を発表。昨年9月の東京都練馬区との協定締結を皮切りに、今年2月には北海道でコンビニのセイコーマートを展開するセコマ、7月には熊本市、8月には県として初めて三重県とも災害連携協定を結んでいる。
協定の基本的な形は、自治体が公用車としてリーフを導入して、平時にはゼロエミッション社会の普及・実現に貢献、災害時には当該地域の日産販売会社が試乗車のリーフを避難所などに派遣して電力を供給するといった協力関係になっている。リーフe+の62kWhであれば、災害対策本部では4日間(エアコン4時間使用含み45kWh)、公民館などの避難所では1日分(熊本市の想定で51.5kWh)の給電が可能であると想定されている。今後、連携協定を締結する自治体が増えていけば、CO2排出削減を実現しながら、同時に災害に強いまちづくりが全国に普及していくことになる。
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