トヨタ自動車が車いす利用者の移動の自由を拡大するために鳴り物入りで開発したジャパンタクシー。2017年10月発売だから発売後15カ月が経過しようとしている。国の政策の後押しもあり、昨年末時点の総販売台数はトヨタ調べで1万598台となっている。法人タクシーは全国で19万台超走っているから現状で5%ほどか。今後、車両の老朽化入れ替えとともにクラウンからジャパンタクシーへの転換が促されると期待されている。
一方であたらしい取組みのタクシーだけに販売開始後、タクシー事業者、車いす利用者、一般利用者、さらには混合交通の中での他車から色んな意見が寄せられているのも事実だ。マガジンXでもジャパンタクシー発売当初から指摘してきたことだが、今回の改善のポイントともなっている車いす利用者にとって乗り降りに時間がかかる、車いす利用者を乗せるために、タクシー運転手が手順を覚えられないほど複雑な行程が求められる。スライドドアの開閉速度が現状で6.5秒と時間がかかるため、ドアが閉らないうちにクルマを見切り発車させてしまう。これは危ない!! また、車いす利用者をタクシーに乗せるために、交通渋滞が起きてしまうなど、それぞれに不満が多く寄せられていた。
こうした事態にトヨタは異例とも言える発売後早期の「改善対策」に踏み切った。車いす用スロープや車内の車いす固定装置の簡素化がその目玉だ。さらにスライドドアの開閉時間を現状の6.5秒から「安全を犠牲にしない範囲の5秒に短縮した」(粥川チーフエンジニア=CE)。このほかにもセーフティセンスの更新、リアワイパーに間欠機能を追加などを行った。3月に発売する改良車から導入する。
さらにはすでに販売された1万台超の既存車についても部品の追加や一部車内の車いす固定装置の変更により、安全を犠牲にしない範囲で利便性向上を図る。既納車両の改良については原則としてトヨタが費用を負担する。
会見で粥川CEは、記者の「なぜ最初から利便性を考えなかったのか」の指摘に対して、「安全を最優先するあまり、実際に車いすを載せる作業を行う運転手の方の負担に対する思いが足らなかった。指摘は真摯に受け止めるが、日本のタクシー(のベンチマーク)として、少しでも使いやすいように改良を続けていきたい」と話した。「いつでも路上で車いす利用者がタクシーを気軽に拾える社会を作りたい」(同)との粥川さんの思いをぜひ実現して欲しいものだ。
2020年東京オリンピック/パラリンピックを前にジャパンタクシーの普及を加速させることができるのか。異例とも言える早期の改善対策が施されたジャパンタクシーは間もなく我われの前にお目見えする。
なお、会見で粕川CEはジャパンタクシー以外のタクシー仕様車は、「開発していない」と話した。本誌編集部ではカローラセダンに教習車仕様が存在すると考えている。このクルマをベースにしたタクシー仕様車を開発することが可能との見方もあることを付け加えておこう。個人タクシーは新型カムリやレクサスのセダンシリーズを使っているのはよく見る光景だ。
https://newsroom.toyota.co.jp/jp/toyota/26431670.html
取材・文・写真/神領 貢(マガジンX編集長)