ダイハツが新型軽乗用車ミラ・トコットを発表&発売した。税込み価格は107万4600〜142万5600円で、月販3000台をめざすという。
トコットで注目したいのは、企画段階から女性社員で構成されたプロジェクトチームが参画して若い女性のトレンドが織り込まれたことだ。商品企画室の西山枝里さんは「欲しいと思うクルマがない、という女性の声に応えたいと思った。肩肘張らずに自然体でいられるクルマをめざした」と説明。また、実際の開発を通して「女性はカワイイものが好き、という(男性が抱きがちな)固定概念を覆すのが大変だった」「いまはシンプルな物が流行っているということを理解してもらうのに時間がかかった」と振り返った。
参考までに、販売構成比の80%を女性が、30%は初めてクルマを買うユーザーが占める見通しだという。
チーフエンジニアの中島雅之さんは「盛るのではなく、“素”の魅力でこだわったシンプルさ」を見どころとして挙げた。また、女性ユーザーの視点に合わせてパワステを軽くしたところ、社内評価で「軽すぎる」と評定されたものの、女性に乗ってもらったら好評だったとのこと。こうしたエピソードからも、男性開発陣が女性視点に立とうとしても、なかなかリアルな立場に迫れないことが垣間見える。ちなみに、パワステのアシスト量は据え切り時で10%、走りはじめの速度域で30%ほど増しているが、中高速域ではフラフラしないようミラe:Sと同等に設定されているそうだ。また、ステアリングを軽くしたと同時にパワステの戻り制御をコントロールして強め、操縦安定性を作り込んだとのこと。
「資料を販売会社で見てもらった時点では期待値は低かったようだが、実車を見てもらうことで(良さを)理解してもらえた」(中島さん)とのコメントにもあるように、マガジンX取材班が販売会社の関係者に取材したところ、似たような声が聞かれた。
なお、女性が開発に参加したケースは過去にもあったが「ある程度、企画がかたまってからのブラッシュアップ、いわゆる“ご意見番”として声を聞いていたのに対し、トコットでは企画の立ち上げから参加してもらった」(中島さん)のが違いだ。
盛らずにシンプルな方向をめざしたとは言え、一方で従来どおりアクセサリーを加えてドレスアップを好むユーザーに向けてのパッケージも設定。ユニークな取り組みとして、これまで交換して取り付けていたホイールキャップやドアハンドルを生産工場であらかじめ組み付けることによってムダを省き、追加工程が必要となるアドオンのパーツ(サイドスカートやストライプテープなど)は従来どおりディーラーで装着する方式が取り入れられた。ムダにならない部品代と、工場で装着を済ませる部品の工賃削減によって約4割の価格低減が実現できたそうだ。