2年前のジャパン・モビリティ・ショーにサプライズ出展されたプレリュードが、いよいよ市販車となって現れた(発売は9月5日)。単グレード展開で税込み価格は617万9800円。国内では月販300台が計画されている。
報道陣向けに開催された発表取材会で「他社にはない電動車専用クーペ」と同社・日本統括部長の川坂英生さんが紹介したように、新生プレリュードには2L直噴エンジン(アトキンソンサイクル)と2モーター式ハイブリッド機構が搭載されている。ホンダは27年から展開する予定で次世代HEV商品群を開発しており、プレリュードはネーミングどおり「その前奏曲である」とは執行役専務の井上勝史さんのコトバ。
すでに公開されているように、外観は低く構えたフロントノーズや薄型ヘッドランプ、流麗なルーフラインによるシルエット、横一文字テールランプで構成されている。歴代プレリュードは独立したトランクスペースを有する2drクーペだったが、新型はシルエット、使い勝手、空力特性を考慮してハッチゲート付きの3drクーペに設計されている。

3代目のイメージカット(左)と、最新モデルのイメージカット(右)を並べてみた。
内装はブルー×ホワイトとブルー×ブラックから選べる。Dシェイプの専用ステアリングホイール、青空をモチーフにしたグラフィックが表示される全面デジタルメーターだけでなく、形状が作り分けられた運転席と助手席にも注目したい。
リアシートを前倒しすればゴルフバッグ2個やサーフボード2枚にとどまらず、19インチタイヤ4本が載せられるほどの空間が現れるというから驚きだ。床下にも収納ボックスが用意されており、床面ボードは立てた状態で固定できる。
ハイブリッド機構には次世代HEV群にも用いられる「S+Shift」が先行採用されている。あたかも8速AT搭載車かのごとくエンジン回転数が制御され、スピーカーからはエンジンサウンドが放たれる。また、商品コンセプトでもあるグライダーの滑空にヒントを得て、アクセルOFF時にニュートラルギアに入れているかのようにスイスイ前進するコースティング制御をホンダ初採用。
ドライブモードは「スポーツ」「GT」「コンフォート」の3つから選べ、S+ShiftのON-OFFと掛け合わせると6種類の走りが楽しめる。パワートレイン、電動パワステ、サスペンション、メーター、エンジンサウンド、アダプティブ・クルーズコントロールなどがモードごとに制御される。
シャシーは同社のピュアスポーツ2BOXであるシビック・タイプRから流用され、グランドツーリングカーに見合った専用チューンが施されている。また、原価を抑えるためにタイプRのパーツが多く流用されているという。
取材会の席上で井上さんは「圧倒的な動力性能を誇るシビック・タイプRとは別の種類の走りが楽しめる」と紹介した。
新生プレリュードは日本導入を皮切りに、年末までに北米で、26年前半にヨーロッパで売り出される。海外向けの販売計画台数は未公表だが、もっとも台数が見込まれているのは北米だ。生産は埼玉県・寄居工場が担う。

左から開発責任者の山上智行さん、執行役専務の井上勝史さん、日本統括部長の川坂英生さん。
今日の国内スポーツ&スペシャリティ市場は年間販売3万〜4万台の小さなマーケット。なぜ、このマーケットに改めて参入するのか。井上さんは「ホンダ・ブランドを牽引するスポーツモデルが欲しかったから」「ホンダにはスポーティな走りを実現するポリシーがある。コアなファンに応えるのも任務」と説明。
ホンダのブランドイメージは世代によってバラついており、若い人の間ではN-BOXの存在感が強くて軽自動車メーカーとのイメージもあるようだ。それをかつての「スポーティ」に引き戻す&集約する狙いがプレリュード投入には込められている。
開発責任者の山上智行さんは「(消費者が)忘れてしまっているだけで、潜在的な欲求はあるはず。SUVが多い中、全高の低いクルマが走れば新鮮に見える。人がやらないことをやるのがホンダ」と語った上で「プレリュードに恋してもらいたい」と呼びかけた。
7月から日本統括部長を務めている川坂さんは「国内で年間70万台の安定販売をめざす」「近々投入するN-ONE e:とともに、BEVとHEVの両輪で電動化を進めていく」とコメントした。また、プレリュードに関しては「購入者の60%くらいが輸入車など他ブランドからの代替えになりそう」との感触を得ているという。かつてプレリュードに乗っていたユーザーの多くは輸入車に流出したが、戻ってくるのではないか?との展望も。価格は決して安くないが「残クレで高い残価率が維持されるため、若い人にも買いやすい」とした。
最後にマメ知識をひとつ。新型プレリュードのCMには3代目のCM曲として使われた「地下室のメロディ」が再起用されている。赤いプレリュードが現れる映像ともども、きっと50代より上の消費者は懐かしく感じるに違いない。
途中の場面では背後に3代目が停まっていて、ちょうどリトラクタブル・ヘッドランプが開く。また、店の看板にはかつての取扱チャンネルだったVerno(ベルノ)の文字と、初代が発売された1978の年号も!