ホンダの新事業創出プログラム第1弾としてクツ装着型振動ナビが10月1日発売へ

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ホンダの従業員を対象にした新事業創出プログラム「IGNITION」の第1弾として21年に設立されたベンチャー企業「Ashirase」が、ついに市販品を発売した。

Ashiraseが売り出したのは、視覚障害者の歩行を振動でサポートするナビだ。最新版は23年に限定販売されたモデルよりもデバイスが軽量化されたほか、歩行データと独自アルゴリズムを組み合わせることで精度の高い位置情報&方位推定を実現。
初版モデルではクツに取り付けてスマホとペアリングさせるセットアップの難しさが指摘されたため、これを改善。また、よく通る道を記憶させられるマイルート機能も加わった。取り付けるデバイス本体が硬くて違和感や靴ずれの原因になるとの指摘もあり、つけ心地も見直された。

日本には約200万人の視覚障害者が暮らしており、これまでに駅のホーム転落といった不幸な事故も起きている。慣れない道を歩く際には健常者もスマホのナビ機能を使うことが多いが、視覚障害者の場合は白杖を持ち、周囲の音にも注意を払っているケースが多く、そこにナビの音声案内が割り込んできても聞き取れない(もしくはナビの音声に気を取られて自身の安全確保がおろそかになってしまう)という。
こうした課題を解決できないか?と考えたのがAshiraseで代表取締役CEOを務める千野 歩さんだ。まだホンダ社員だった千野さんは身内の不幸な事故をキッカケに、視覚障害者が直面する課題の解決に仲間と取り組み、IGNITIONに応募してAshirase設立に至った。

本体の保護も兼ねて別色のカバーを買い足せば、クツやファッションに合わせて色変えも楽しめる。

クツの内側にデバイスを取り付けて専用のアプリで目的地を設定すると、3カ所(足の甲、側面、かかと)が左右別々に振動して進む方向や曲がり角などを知らせてくれる。価格は5万4000円(非課税)で、アプリの基本利用料は月額550円に設定されている。8月1日から先行予約の受け付けを始めたところ、すでに初回生産分の300台が売り切れたという。

今年7月から「あしらせ」を使っているパリ・パラリンピック視覚障害者柔道で銀メダルを獲得した半谷静香さんは「つねに(足を通じて進行方向の)情報があって不安になることが減った」と感想を述べた。また「振動の種類を覚えるまでに慣れが必要」としながらも「パリ・パラリンピックの選手村で日本棟からシャトルバス乗り場までマイルートを登録して使い、介助者と一緒でも そろそろ曲がり角だな、という気持ちの準備ができた」と利便性を語った。「以前のモデルは四角で引っかかって壊れる恐れがあったけれど、新しいモデルは丸みを帯びているのがいい」と形状に関する改善点にも言及した。

今後の課題として千野さんは、長靴にも取り付けられるデバイスや足の神経が弱っている利用者でも感知できるデバイスの開発をあげた。さらにはアプリを通じて買い物、旅行、就業、引っ越しなど、視覚障害者が困難を感じる場面でサポートしていきたいとの方針を語った。
ちなみにIGNITIONはホンダ従業員を対象にスタートしたが、今年4月には一般公募も実施されて3つのプログラムが採択された。ホンダ社内の公募も含めて現在8つのプログラムが実現に向けて動いているという。

https://www.ashirase.com

Ashirase代表取締役CEOの千野 歩さん(左)と、パリ・パラリンピック視覚障害者柔道 銀メダリストの半谷静香さん(右)。

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