「借り換え」で高速道路整備する危うさ

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「借り換え」で高速道路整備する危うさ

 

本日、石井国交大臣の閣議後定例記者会見が行われた。以下は石井大臣の発言の要約。

  • 来年度の財政融資計画について1.5兆円を追加してもらうことを要請した。圏央道や東海環状区間の整備によりストック効果が現れている。
    ●九州北部豪雨の復旧について。
    甚大な被害を受けた河川で九州北部緊急治水対策を行う。概ね5年間で復旧事業を行う。まちづくりの支援も行う。中小河川緊急治水対策プロジェクトは、約700渓流で投下型の砂防工事を行う。300kmで河川の掘削を行う。約5800カ所で低コストの水系維持を行う。

質疑応答。
Q 1.5兆円の要求経緯について。
A 三大都市圏での重点投資の必要性を訴えた。財務省とも調整の上、財政融資の追加要求をしたもの。圏央道で生産性向上のストック効果が得られている。低金利状況を生かして、独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構機構が発行する予定の長期債を政府が肩代わりすることで、投資余力が増す。圏央道、東海環状道などで供用目標が明示されていない箇所で、工事環境が整っている区間を優先する。
Q 河川の緊急対策について。
A あらゆる手段を講じていきたい。中小河川において取り組みを加速させたい。九州北部豪雨では、河川の氾濫に加えて、土砂や流木によって甚大な被害が発生した。技術委員会の検討結果を踏まえて被災地の復旧に努めたい。
Q 圏央道2024年度開通は事実か?
A 時期については道路会社と協議して精査する。整備加速が見込めない地域は入らない。
Q笹子トンネル事故から明日で5年になる。
A 笹子トンネル事故に関して、山梨県警が書類送検したが、操作中につきコメントは控えたい。平成25年をメンテナンス元年にした。老朽化対策に重点的に取り組んできた。大規模更新事業も順次実施している。
Q 来年施行される民泊法について。
A 合理的に必要と認められる区域、期間に限って利用できると定められている。状況を注視したい。
Q 札幌航空管制部において、24日に管制官と航空機との間で通信施設に不具合が生じた。
A 欠航等が発生した。遺憾。22日の福岡空港での障害は気象の影響だった。非常用電源設備の総点検を行う。札幌とは異なる。電源対策を徹底したい。

以下は記者とのやりとり。

Q 2065年の高速道路無料化の旗を下ろしてはどうか?
A 大胆な発言ですねぇ。現行法に基づいて実施する。
Q ETC2.0の普及が進まない。
A クルマと道路の双方向の通信は重要。普及促進を図る。
Q ナンバリングが認知されていない。
A 私も「この数字は何?」と聞かれた。東京オリパラまでに全国の高速道路で概成させる。

会見後の記者レクでは以下のように事務方から説明があった。
「とくに圏央道の整備の加速。久喜白岡JCTから大栄JCT間の現行2車線の4車線化、大栄JCTと松尾横芝ICの整備加速を進める。4車線化の用地買収は済んでいる。神奈川県内の横浜湘南道路は未開通。目標年度の見込みは立っていない。規模感で要求した」。

高速道路を建設した借金は、その多くが全国プール制にぶち込まれている。本四架橋も東京湾アクアラインもだ。高速道路の持ち主である機構が、道路会社の収入によって国に借金を返す仕組みの中で、固定金利で「借り換え」を国が行い、投資を促進させると言うことだ。
ありていに言えば、個人が住宅ローンを低金利で借り換えることで、ローンの返済負担が減って月々の生活が楽になるだろ。もっとカネを使え、道路を作れと言っているわけだ。
なお、国は1%の金利を「高めに設定した」とするが、万が一、長期国債など国の借金の利払いが1%を超えてくるようだと、事実上、国民負担が増えることを意味する。今回の圏央道の整備効果は大きいと思うが、この「借り換え」の手法を今後も使って、まだ未整備の区間や4車線化を進めるとすれば、問題も大きい。注意深く見守らなければならない。

取材・文・写真/神領 貢(マガジンX編集長)

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