JAF広報部、会員の伸び鈍化は「損保業界のロードサービス付帯の影響が大きい」。

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JAF広報部、会員の伸び鈍化は「損保業界のロードサービス付帯の影響が大きい」。

日本自動車連盟(JAF)の矢代会長に面会インタビューを申し込んだら、面会取材NGで質問に対する回答が広報部から来た。なぜ矢代さんはご自身の口で語らないのか。そんなにインタビューでの不測の事態が起こるのが怖いのか。記者には理解できない。仕方ないので、本誌の質問と広報部からの書面回答をそのまま掲載する。 建前が多いが一部ホンネも透けて見えた。JAF会員は必見だ。

  • オーナードライバーを中心とする会員組織としてのJAFの役割について、矢代会長の率直なお考えを承りたい。

【回答】

JAFは、ロードサービスを基幹事業とする会員制の組織であり、1891万人(2017年8月末)の会員の方々に支えられております。JAFの役割は、第一に会員サービスの遂行であり、会員に対する自動車ロードサービスの実施と会員優待サービス、情報提供等のサービスを提供しております。第二に広く交通安全・環境保全活動、モータースポーツ振興、自動車ユーザー全体の権益の擁護等の活動を実施し、健全なくるま社会の発展に貢献することです。これらの活動の基本は、JAF発足以来一貫しており、これからも変わることはありません。

  • とかく販売業界、行政との結びつきが強いと批判されるJAFだが、ユーザーの会費で運営されている立場として、販売、行政とどのような距離感でユーザーサービスを行っているのだろうか。

【回答】

販売業界や行政機関に限らず、JAFの業務を推進するためには、様々な企業や団体の協力が必要です。このため、JAFは、幅広く様々な分野の事業者や業界団体等と協力関係を構築しています。JAFの持続的な発展のためには、新規の会員募集が不可欠ですので、販売業界の事業者の皆様とは特に広範な協力関係を構築しております。また、行政機関についても、JAFが様々な社会貢献活動を進める上で、関係する行政機関との情報交換や関係団体との連携は欠かせません。もちろん、販売事業者の皆さんや行政機関も理由がなくJAFの活動に協力しているのではなく、JAFと協力関係を持つことが自分にとってもメリットがあると判断してのことであると思います。JAFがどのような相手とどのような関係を持つかは、「会員サービス」と「社会貢献」というJAFに課せられた責務を果たす上で何が必要かということで判断することになります。

  • クレジット業界や損保業界との間で、ロードサービスが競合している。その結果、家族会員を除けば本会員の伸びは鈍化していると思われる。ロードサービスのあり方をどのように考えているのか。一部には、クレジットや損保の下請けをJAFが行っているという話も聞く。

【回答】

確かに、この10数年来、家族会員を除く個人会員と法人会員の伸びは鈍化しており、その大きな要因の一つが損保業界やクレジット業界が商品に付帯しているロードサービスとの競合にあると考えています。このうち、JAFにとっては特に損保業界のロードサービス付帯の影響が大きいと考えますが、これに対する対応としては、ユーザーが自動車保険と併せてJAFにも進んで加入するような環境を整備することが重要であると考えております。具体的な施策は、次の通りです。

  •  自動車保険付帯のロードサービスではカバーできない車のトラブルが存在し、自動車保険とJAFと組み合わせることにより万全な保証が得られることを周知する。
  •  国内大手の損害保険会社で講じられている、JAFの会員に対して通常以上に保険給付のサービスを行う優遇措置(例、故障時の部品交換について一定額までを保険でカバーする等)をできるだけ多くの損害保険会社に広げて行く。
  •  JAF会員向けの優待施設割引サービスの対象施設を更に拡大し、会員メリットを大きく引き上げる。

以上の取組みは、この数年かなり進展しており、これに伴い個人会員、法人会員についても在籍会員数が徐々に復調しつつあります。

  • かつてJAFの物販や出版業などの営利目的の関連会社について、その存在理由が一般社団法人としての適格性に疑義を与えるものと指摘された。今後、社団法人ではなく通常の民間サービス企業として運営していく考えはないか。

【回答】

ご指摘の通り、かつてJAFは、政府の「公益法人は営利目的の関連会社の運営を自粛すべきである」との方針に従い、営利事業から距離を置くこととしました。しかし、6年前に公益法人から一般社団法人に移行したことにより、このような束縛はなくなりました。そこで、今後は物販や旅行業等の営利事業を積極的に進めたいと考えております。ただし、このような営利事業は、JAF本体ではなく関連子会社を中心に進めることが適切であると考えています。通常の民間サービス企業といえば株式会社の形態をとることになるかと思いますが、営利を目的とし、株主を優先した経営を行う株式会社と、会員サービスを優先し、会員の利益のために事業を行う一般社団法人とでは、基本的に経営姿勢が異なります。また、JAFは、交通安全その他の社会貢献活動を重要な活動と位置付けておりますので、その意味でも現在の一般社団法人の形態が最も適切であると考えます。

  • とかく批判が集まるのが、多額の内部留保である。JAFは会員退会の引当金と主張しているようだが、社団法人のノーロス・ノープロフィットの考えと矛盾しないのか。ADACやAAA同様、JNCAPに資金や人の面で協力する考えはないか。

【回答】

一般社団法人であるJAFの運営は、基本的にノーロス・ノープロフィットの考え方で行っております。しかし、これは単年度のバランスシートでみるのではなく、長期的な経営の観点から見る必要があります。ご指摘のようにJAFは、単年度又は複数年の会費を前金でいただき、これにより業務を運営しておりますので、この預かり金ともいうべき前受け金相当額の流動資産を常に抱えており、この部分が一見内部留保のように見えます。また、これ以外に定期的に必要となる多額の施設費やシステム改修費、物価の変動や増税に伴う調達コストの増大リスク等について、会費を値上げせずにこれを吸収し、安定的に業務を行っていくためには相応の資金のストックが必要です。ご指摘のJNCAPの事業は、現在独立行政法人であるNASVAが実施しています。幸い我が国には世界に類を見ない自賠責保険の制度があり、その再保険勘定が生み出した多額の運用益等の剰余金がありました。現在、この資金の一部がNASVAのJNCAPの事業に充てられております。そもそもこの自賠責保険の運用益等の剰余金は自動車ユーザーの負担に由来するものであり、その一部がJNCAPの費用に充てられるのは極めて適切であると考えます。もとより、JNCAPの事業は広く自動車ユーザーに恩恵を与えるものであり、JAFとしても制度発足当初よりNASVAの取組みに協力してきており、またNASVAによるJNCAPのテストの結果を広く国民に周知するために努力しております。JAFの運営においては、会員の皆様からいただいた会費は基本的には会員サービスの事業に充て、社会貢献活動についてはできるだけ収益事業の収益で賄うのが理想です。今後、収益を拡大することにより、社会貢献活動の充実につなげていきたいと考えております。

  • 税制、自賠責保険、有料道路料金など、ユーザー負担はいっこうに減らない。JAFはこうした問題にも取組んでいるが、実効性は小さい。今後の取組みをどのように考えているか。

【回答】

残念ながら、ご指摘いただいた問題について、私どもの声がなかなか実現に至っていないのが実情ですが、こうした活動は「声を上げ続ける」ことが重要であると考えています。JAFとしては、健全なくるま社会を実現する観点から、自動車ユーザーの視点から見て、明らかに不合理な制度上の問題があればこれを指摘するとともに、ユーザーの意識や意見を確認し、その声を政策担当者に届けることが与えられた任務であると考えています。税制活動においては、ユーザーアンケートの回答者が年々増え、今年度は8万8千名を超えました。またユーザーの声を届ける活動として全国のイベント会場等でユーザーの生の声を収集する活動を展開しており、より効果的な展開を検討しています。さらに若い家族層にSNSを活用した自動車税制の呼びかけを行い、ともに声をあげていく活動も進める考えです。自賠責保険制度では、被害者救済や事故防止対策の充実のためにも一般会計に繰り入れられている自賠責保険料積立金・剰余金6169億円を期日までに返済するよう引き続き訴えてまいります。高速道路についても国の会議において、アンケート調査をもとにユーザーの不満・要望をよりまとめ、提言を行っております。JAFは今後も自動車ユーザーの負担軽減に向け、様々な活動を続けてまいります。

  • モータースポーツの公認団体として、日本のモータースポーツ衰退の現状をどのように捉えているのか。今後、モータースポーツを活性化させる上でどのような役割を担う考えだろうか。

【回答】

国内モータースポーツの現状として、公認競技会の開催数につきましては、F1、WEC等FIA選手権を含む国際格式競技の競技会数は増加傾向にあり、全日本選手権競技会数はここ数年ほぼ横ばいの状況から、2018年シーズンは本年より増加する予定です。また競技ライセンス取得者数については、国際ライセンスと国内Aライセンスの発行数は近年ほとんど変化が無い一方で、国内Bライセンスの取得者数は1990年代前半に訪れたピークから一時は半減するほど落ち込みましたが、最近は微増傾向にあって全体のライセンス発行数は5年連続で増加しています。少子化や趣味の多様化といった要因はどうしても避けられないわけですが、モータースポーツの裾野を広げる努力をすることで再活性化させることは可能であると考えます。モータースポーツへの第一歩を踏み出すきっかけとしての国内Bライセンス取得に向けた取組みにはJAFでも力を入れており、入門者向け競技への参加促進、ひいてはファン拡大にもつながるオートテスト、ジムカーナ等の「グラスルーツ」競技の発展が、今後の国内モータースポーツを盛り上げていく上で、不可欠であると考えております。

●将来の自動運転時代において、ロードサービスの役割も変わっていくものと思われる。将来ビジョンを伺いたい。

【回答】

自動運転時代においても、路上での何らかのトラブルは発生するものと考えられます。ただし、大部分が自動で動くとなれば現在の救援依頼とは様変わりするであろうことは予測しています。すでに、自動車の構造上の変化やインテリジェンス化に伴って、ロードサービスの救援内容も以前と大きく変わってきております。現時点で検討していることは、ドライバーの車の使用上の困りごとや不安、疑問に対応するとともに、ロードサービス現場での対処法について隊員をサポートする24時間体制のテクニカルサポートセンター(仮称)の設置です。併せて、各メーカーの協力のもとで実施してきた新型車の技術研修を継続的に行っていくことで、最新の対応法を内部で共有してまいります。

以上

※写真は9月4日に開催された「自動車損害賠償保障制度を考える会」での矢代隆義会長(元警視総監・左)

 

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